ライブドア事件が持ち上がったとき、規制緩和などの新自由主義的政策に対する批判が盛り上がりを見せた。
これに対して一部の政治家や田原総一郎などは
「規制緩和は正しい」と信仰告白のように唱えた。理由は一切付さずに。
この意見の持ち主できちんと理由を付して説明した人は私が知る限りではいない。そういう信仰告白で終わらないまともな説明が欲しいものである。
(なお
「景気が回復しているのは規制緩和のおかげだ」なんていうおめでたい話は全く説得力がない。例えば、大店法の規制緩和が「シャッター街」を全国各地に作り、景気の後退を進めてきたことは明らかである。それ以外の分野でも似たり寄ったりのことが随分生じていると思われる。都合の良い解釈はやめてもらいたい。)
この問題と同じところから出てきた議論に
「格差」の問題がある。
朝日新聞によると、小泉首相は20日、朝日新聞社の世論調査で格差拡大を感じる人が7割を超え、その半数が小泉首相の政策と関係があると答えた点について「結びつけるのは拙速ではないか。短絡的ではないか」と記者団に語ったという。
これにも同じことが言える。
どこがどう拙速、短絡的なのか?
小泉は
「小さな政府」を掲げており、
政府の機能の一つは所得再配分を行うことである。
その機能を縮小しているのだから、所得格差拡大に拍車をかけると考えるのは短絡などでは毛頭なく、適切な推論であろう。
このことに目をつぶって「小さな政府」を主張することはあってはならないことである。それがようやく俎上に上ったのだから、野党は徹底的に追及して欲しいし、一般の人々はこのことについてよく調べた上で、よく考えて欲しいものである。(もちろん、私もそうしていくつもりだが。)
格差の問題なら、
佐藤俊樹『不平等社会日本』(中公新書)と橘木俊詔『日本の経済格差』(岩波新書)が手軽な上に適切な内容を提示していると思われる。ちなみに、これらの本は、それぞれ「機会の平等」と「結果の平等」についての議論に対応する。

0