減らぬ50代の官僚どうしよう 天下り規制に政権悩む
2010年3月26日11時43分

仙谷由人国家戦略相や原口一博総務相が公務員制度改革で苦慮している。マニフェスト(政権公約)に掲げた「天下りのあっせん禁止」を先行して決めた結果、50歳代の官僚数が大幅に増え、その分新卒採用を減らす必要が出てきたためだ。人件費総額の上昇も避けられず、「公務員人件費の2割削減」という公約にも黄信号がともっている。
官僚機構は、課長、部長、局長と昇格するに従ってポスト数が減る。出世コースから外れた官僚は、所管の関連団体や企業に「天下り」してきた。再就職先を用意した上で早期退職を勧奨する「肩たたき」という慣行だ。勧奨退職者は年間2500人いる。
鳩山政権は、公務員制度改革の第1弾で「官民人材交流センター」の廃止を決め、天下りの「あっせん」を禁止した。再就職先がないのに「肩たたき」を続けるのは難しいため、マニフェストに盛り込んだ「定年まで働ける環境」も整えていく方針だ。
だが、あっせん禁止が先行した結果、勧奨退職者の扱いが宙に浮いてしまった。総務省の試算では、肩たたきをしないで公務員の定員数を守るには、2011年度の新卒採用者数を、09年度比で約44%少ない約4千人にする必要があるという。年功序列の給与体系のため、ベテランが残って新人が減れば、人件費は年900億円増える。
原口氏は23日の記者会見で、民間企業への出向者の拡大に取り組む姿勢を見せた。民間出向で公務員数を減らし、新卒枠への影響を抑えるねらいだ。ただ、業績悪化に苦しむ民間企業に大量の官僚を受け入れる余地は乏しい。
民間も含め、公務員の人事異動の柔軟化を目指す仙谷氏は、「早期退職勧奨は一つの手段としてある。民間で言えば希望退職みたいな制度を作る必要もある」と、公務員の自発的退職を促す方針。だが、「あっせんもなく、割り増しの退職金だけで辞めろというなら、再就職に有利な仕事ばかりをやる」(経済産業省幹部)と、士気低下を懸念する見方もある。(岩尾真宏、伊東和貴)
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悩む必要などないはずである。
「天下りを禁止」するならば公務員が増えるのは(特に代案を提示しないで行うならば)必然的な結果だからである。
「天下りをやめろ」と声高に叫んでいた人に、公務員が増えるという認識がなかったとすれば、状況を知りもせずに(批判とは呼べないレベルであり)「非難」していただけであったということだ。天下りをすれば公務員が増えるという認識があって「批判」していたのであれば、公務員が増えることを容認するか、代案を出しながら政策提言していたはずである。しかし、「天下りをやめろ」を声高に叫んでいた人の中には、
はじめから代案を提示しながら政策提言を行っている人は、私が知る限りでは、ニュース、新聞、雑誌、ブログ等のレベルの言論を見る限りでは
まったくというほどなかったと言って良い(行政学の論文等は除く)。むしろ、
この認識を持っている人は(私と同様に)「天下り批判」に迎合することに対して慎重な姿勢をとっていた。(ごく少数派だが。)
むしろ、日本はOECDなどの中でも公務員数が少ないのだから、公務員数が増えても諸外国と同程度の再配分を行うようにすればよいのであり、それ自体は何ら問題ではないはずである。(
財政赤字の原因は公務員の人件費ではないのだから、財政赤字を解消したいならば、その原因を除去したり対処したりすれば良いのである。(この件に関しては、
「官僚に搾取(収奪)された」などと言っている
劣化した「70年から100年くらい前のマルクス主義者」のような人も世の中にはいるようだが…。)
そして、
何らかの具体的な代案がない限り、公務員人件費2割削減と天下り禁止とは辻褄の合わないものであることは初めからわかりきったことであった。少なくとも私にはそうであった。つまり、こんなことは今になって騒ぐことではない。人数が増えるのに人件費2割削減などというのは実行可能とは思えないし、実行したときの波及効果を考えても得策とは思えない。日本における一般人の生活がOECD諸国レベルより下がり、
世界的に見て中くらいにまで下がってよいというのが主権者の合意であるならば、公務員の給与削減も良いだろうが、そうした覚悟もないのならば「人件費2割削減」というマニフェストを撤回すれば良いだけのことであろう。
なお、
公務員だけを叩いて自分の生活には何の影響もないと思うのならば、「天下り」は禁止しながら人件費が増えないと思うのと同じ愚を犯すことになるだろう。(よほど高度ないし特殊な技能を有する労働者や経営者には不都合は生じないだろうが、特別な技能を持たないような一般人は後々影響が回ってくるだろう。詳述は機会があったらすることにする。)
名古屋市長による、議員の給与引き下げや定数削減などの話もそうだが、問題のプライオリティからすれば、今はそんな些事にかかわっているときではない。
もし、高額資産や「高給取り」が問題ならば、所得税の累進性を高めたり、相続税の税率を激増させたり課税最低限を激減させればいいだけのことであり、
今はこうした租税政策と社会保障制度と労働政策や金融政策を含む広義の経済政策の組み合わせをこそ議論するときではないだろうか?
いつまでこういったワイドショーやゴシップ誌レベルの政治が続くのかに思いを致すとき、日本と呼ばれる政治的領域の将来は暗いといわざるを得ない。

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