<派遣切り>中小企業23%が景気悪化対応策に 厚労省調査
11月1日21時50分配信 毎日新聞
米国発の金融危機の影響で円高や株安が進む中、輸出型製造業を中心に、派遣労働者や契約社員の再契約を停止する「派遣切り」が広がっていることが、10月の厚生労働省調査で分かった。景況悪化への対応策として「派遣やパート、契約社員などの再契約停止」を挙げた企業は、前回7月調査時の17.8%から5.6ポイント上昇して23.4%。企業にとって雇用調整がしやすく急拡大した派遣労働者に、景況悪化による被害の第1波が出始めたことが鮮明になった。
調査は、全国のハローワークが従業員300人未満の中小企業4285社から経済情勢の変化に伴う事業や雇用への影響をヒアリングしたもので、7月に次いで2回目。全体の81.1%(前回83.2%)が、金融危機などによる景況悪化が収益を「大きく圧迫」「やや圧迫」したと答えた。7月には原油高により「圧迫」の比率が95.7%と高かった運輸業が88.1%に低下したことから、全体としては下がった。
「圧迫」を感じている企業の対応は「経費削減」(人件費除く)が69.5%、「価格転嫁」が28.5%、「賃金・雇用調整」が18.8%。「賃金・雇用調整」は前回より3.8ポイント増え、じわりと雇用に影響が出ている様子がうかがえる。その中身は「ボーナス削減」が55.6%でトップだが、前回比では1.4ポイントの減。「派遣やパート、契約社員などの再契約停止」の上昇ぶりが際立つ。
特に輸出型製造業(43.6%)と製造業(29.4%)で再雇用停止の比率が高く、実際、自動車産業や電機産業で生産調整などの名目で派遣労働者の雇い止めが目立ち始めている。派遣労働者に対する企業の過剰感を示す指数(過剰から不足を引いた割合)は13.5(前回4.5)と急上昇し、輸出型製造業では26.0(同8.9)と突出している。厚労省は「派遣労働者の雇用が特に厳しくなっている」と分析する。
派遣労働者の労組「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長は「再契約停止だけでなく、契約途中で解雇されたなど『派遣切り』の相談は増えている。以前の不況では全体に少しずつ痛みがきたが、派遣労働が急増してきた中で、集中して影響が出ている。安易な首切りという派遣制度の問題点があぶり出された」と指摘している。【東海林智】
最終更新:11月1日22時14分
毎日新聞
90年代から2000年代前半頃には、派遣労働を積極的に擁護する論調がそれなりにあったが、その頃、これを擁護していた連中はこうした事態に対してどのように取り繕うつもりなのか?なお、自民党(カバ面の中川)はこうした場合に派遣が先に切られ、正社員は雇用が続けられることについて
「正社員や終身雇用の既得権」と呼んで批判し、その
「既得権」を崩すことをもくろんでいる。
「派遣切り」が発生してしまうことこそ、派遣労働や労働の「自由化」に反対する勢力による批判の核心だったはずである。少なくとも、私はこうした事態を懸念していたつもりである。
企業の内部で調整するのではなく、安易に労働者を外部に吐き出すことによって収益を守ろうとするようでは、単に労働者のためにならないだけではなく、中長期的には
企業のためにもならないだろう。それは
貴重な人材を育てることができないシステムだからである。
今回の金融危機から学ぶべきことの一つは、仮に企業がグローバルな活動を展開するとしても、個々の主体(個人、企業、政府)から見ると
外部からの悪影響を最小限にとどめることができるようなシステムを如何にして組み込んでおくか、ということではないだろうか。さらに、私としては、そのような
個々の主体による対応だけでは十分ではなく、グローバルな投資や貿易のルール(規制)の確立も必要であると考える。つまり
「外部」そのものを安定化させることである。
かつてのブレトンウッズ体制とは異なる
新たな「ブレトンウッズ体制」の確立というのが私が考える大まかな方向性である。(これに関する見解として、
ケインズの思想が参考になると私は考えている。)
余談だが、私は1年半ほど前に
「小泉内閣の政策による「格差」、正確には「貧困化」の効果が出てくるのはこれからだと想定するべき」だと述べていたが、金融危機による世界的な不況の発生は、私の「予言」が的中することを意味してしまうだろう。
過去20年ほどにわたり、「弱いもの」を切りやすくすることが「自由化」の名の下で行われてきた(新自由主義)。今日の金融危機では「強いもの」が打撃を受けることとなったが、
彼らが構築してきたシステムは、「強いもの」は「弱いもの」へと打撃を転嫁することができる仕組みだからである。
今回の「派遣切り」はまさにその核心の一つであると共にそれを象徴する事態でもあるのだ。

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