「暫定税率撤廃派は税・財政に対して無関心で無責任?」
政治・社会
道路暫定税率失効、福祉や教育に影響も・日経試算
道路特定財源の暫定税率失効が、道路整備にとどまらず福祉や教育といった地方自治体の行政サービスにも影響を与える可能性のあることが、全自治体を対象にした日本経済新聞の試算で明らかになった。単独事業と呼ばれる独自の道路整備費が暫定税率分の税収を下回る自治体が全体の2割弱あり、事実上の「一般財源化」が進んでいるためだ。地方債の増発で財政が悪化する自治体が相次ぐことも想定される。
試算は2006年度決算をもとに、道路橋梁(きょうりょう)費(維持修繕費や災害復旧費、過去の道路建設に伴う公債費は含まず)と、税収などの減少見込み額を比較した。(21日 11:45)
以上、日経より。
基本的に、
私が言ったとおりのようだな。
これを見越すことすらせずに、暫定税率撤廃が「生活」の改善になるとか言って賛成していた人間は少し考え直してみることが必要だろうな。
財政赤字の危機感が煽られているため、心理的に危機感や負担感を感じている人が多いのは確かだが、人々はその実体とも言うべき税や財政に関心はない。財政赤字に危機感・負担感を感じることと、税や財政に関心があることとは違うことなのだ。必要なのは関心であり、危機感ではない。しかし、ほとんどの人は無駄に危機感だけはあるが関心がない。
無関心だから無知であり、無知だから容易に騙され、煽られ、判断を誤り続ける。
無関心だから(責任を求められそうになると、それへの反応は)無責任であり、「官僚の無駄遣いが悪い」「増税する前に無駄をなくせ」などと一見もっともらしいことを言いながら責任逃れをしようとする(★注1)。
主権者でありながら、まともに財政を監視しても来なかったのは誰だ?議会と行政にお任せか?「監視して来なかった」どころか、今でも現状を自力で分析できない人が大部分だろう?それは無関心であることを証している(★注2)。
(★注1)この「官僚の無駄遣い」論は、実際のところ、歴史修正主義とソックリである。いずれも「自分の都合」が念頭にあって(@)、自分に都合のいいように願望(A)を「事実」として語る(B)。語られた事実は彼らの願望の投影にすぎない。
つまり、@ある人にとって「軍の命令がなければ好都合」である場合、A彼は「軍の命令はなかったらいいな」と思う。Bそして、現実との十分な整合性はなくても「軍の命令はなかった」とあたかも事実であるかのように言う。しかし、実際には彼らが語ることは現実とは齟齬がある、といったパターンである。
@財政赤字は自分のせいではなく官僚のせいであれば好都合。A自分の責任ではなく官僚のせいだったらいいという願望。B現実との整合性はなくても「官僚の無駄遣いのせいだ」と言う。
ほとんど同じだろう?
なお、無関心であることに怒りを向けることは、普通はない。しかし、税や財政の問題では、極めて感情的な反応が世に溢れている。これをもって「世間の人々は税や財政に関心がある」と考える人もいるかもしれない。しかし、それは誤りである。
なぜならば、彼ら(税や財政に怒っている人々の多く)は自分の属する家計や会社・業界には利害interestをもっており、短期的・直接的にそれらを害するように見えることに反対しているだけだからである。より中長期的で包括的な視野をもって社会の問題に取り組むという関心interestはない。これこそ税や財政の問題なのだが。
つまり、彼らの関心の主眼は税や財政や社会のような公共的なものにはなく、私利私欲に(短期的に)都合のいい政策を求めているだけである。そのような輩が利益団体や政治家による利益誘導を攻撃するとしたら、おかしな話である。せめてその仮面を外してもらいたいものだ。
(★注2)関心があることに対して全く無知である、なんてことは普通はない。例えば、自動車に関心がある人は普通、いろいろな車種やそのスペックなどに詳しいだろう?マンガに関心がある人はいろいろなマンガについて、誰の作品にどんなものがあり、それらがどんなストーリーなのか、などについて、よく知っているだろう?同じように、財政に関心がある人なら財政のことをよく知っていて当然だろう?
このことを踏まえているから私は「税や財政を批判するときは最低限、制度を理解してからにしろ」といつも言ってきたのである。
私に言わせれば、
暫定税率撤廃に賛成して目先の減税を選んだ人は、90年代以降、ツケを先送りし続けて財政赤字を膨らませてきた主権者(もちろん、政府と与党もだが)と同じ誤りを犯している。
いずれも短期的には純負担(支払いと給付の差し引き)が小さくなるが、中期的には
福祉の削減につながり、長期的には
債務の拡大につながる選択だからだ。
そこには
進歩も反省もない。
とはいえ、大衆に反省は困難である。だから、問題の論じ方を根本から変える必要がある。
広く一般に関心がもたれるべきは、まずは給付のあり方ではなかろうか。それを決めてから歳入を決めるべきである。

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