ガソリン税の暫定税率について一言言うと、世論では撤廃すべきという考えの者が多いようだ。暫定税率を維持すると言っているのは、自民党くらいのものだろう。その意味で自民党政権を倒すという目的のためには使いやすいものではある。
しかし、暫定税率をなくしていいと言っている人たちは、財政の仕組みを分かった上で言っているのかかなり疑問である。
とりわけ、
財政が複数の財布に分かれているということは考えに入れていないのではないか?という疑問がある。
例えば、詳細は説明しないが、
予算に2.6兆円の穴が開いたら、当然、それは現行の財政制度を前提する限り、地方自治体で起債する余地が小さくなることを意味するから、福祉にも影響が出るのは当たり前であろう。
多くの人は、
特定財源とか一般財源という言葉に誤魔化されているのではないか?批判するなら
制度を理解してから批判すべきだ。
いかに多数の人が望むことであろうと、事実に基づかない判断で意見を述べているのであれば、その意見には妥当性はない、ということだ。
なお、民主党も一応、地方自治体に配慮するとか言っているらしいが、対応可能だとは思えない。財務省や国土交通省は民主党の管轄下にはないのだ。
減税になった分の財源をどうするのかが、先に明確なビジョンがあって、その上で減税しべきだというなら検討のしようもあるが、減税だけを先に主張して、その先どうするかが不明確なのでは到底信用することはできないだろう。少なくとも私はそういう立場である。
東国原知事を含めた
自治体の首長の大部分が暫定税率廃止に否定的なのは、彼らは「責任ある当事者」だからである。制度を理解した上で、財政運営をする当事者なのである。
制度を理解せずに好き勝手なことを言っている世論とは違うのである。
自民党の道路族が言っていることには、ほとんど正当性はないが、過去50年近い日本の政治と行政の仕組みが「土建国家」と形容される仕方で運営されてきたものである以上、現在はそのシステム全体の転換が必要とされているのだとすれば――以上のことに異論がある人は少ないだろうが――
道路だけを取り上げて議論しても問題の解決には繋がらない。それは病気の診察をせずに外科的な手術を行なって体の一部を切り取るような暴挙である。
仮に今後は福祉を重視するとすれば、まずそのための福祉制度を設計し、それと同時に道路の予算を削り、同時に必要な財源を見究めるという、計画的かつ政治的な判断が必要なのであって、見た目としては経済や財政について語っているかのような体裁をとりながら、実際には感情論でしかない程度の議論で、道路だけをやめれば良いという事にはならない。また、
道路の予算を削ったからと言って、福祉に金が回るわけでもない。(
この点、多くのリベラルたちは勘違いしているように思われる。私の見るところでは、福祉を充実させるためには先に制度を改善しなければならない。)多くの人は、自分の財布と財政を同列に考えているとしか思えない。財政はそんな単純なものではないのに。
(例えば、
財政が借金することは家計が借金するのとは全く意味が異なるのだが、そのことを明確に理解している人がどれだけいるか、極めて疑問である。
「金を借りること」と「決算上の赤字」も混同されていることであろう。その上、財政赤字を語る人の多くは明らかに、
どのような原因とプロセスで債務が累積していったのかを全くというほど理解していないことがわかる。これは語っている内容を見れば明白に分かる。原因となる要因については全く触れず、根本的に赤字の原因とは関係のないことを――見た目としては経済や財政について語っているかのような体裁をとりながら、実際には――感情的に取り上げているからだ。そこには非難はあっても批判はない。)
これらの観点から判断すれば、私はどちらかというと(自民党ではなく)福田首相が先日の会見で出した考え方は、現在の時期と内容を考えれば妥当なものに見える。
残念ながら自民党を批判して政権から追い出すことを望む立場でありながら、
政権への批判者たちの誤りの方が遥かに悪質であるために、「よりマシ」な選択として福田首相の案を肯定的に評価せざるを得ない状態である。全く嘆かわしいことである。
このエントリーは走り書きなので、後から加筆修正するかもしれない。
【補足】
◆私は福田政権には「不人気だがやっておいた方がいい制度改正」や「人気はあるがやるべきではない制度改正を防ぐこと」を期待している。そうすることが政権交代が起こった後の政党(もちろん、大多数の有権者)にとって利益になる(損失がなくて済む)からだ。

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