5000万件を遥かに超えるデータが宙に浮いている年金支給漏れ問題における責任の所在に関して一言私見を述べておく。
その前に次のasahi.comの記事を一読して欲しい。
三菱東京UFJに業務改善命令 不祥事「突出して多い」
2007年06月11日21時13分
金融庁は11日、三菱東京UFJ銀行に対し、投資信託の販売や海外業務で多数の問題があったとして、「経営責任の明確化」を含む業務改善命令を出した。三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下企業への行政処分は、日米合わせて半年で5件目。同庁は、旧東京三菱、旧UFJ両行の合併準備を優先して法令順守や内部管理がおろそかになった可能性があるとみており、徹底した改善を求めている。(後略)
業務実態がずさんな銀行に対して、経営者の責任が問題にされている。(実際に、特段に問題が多いならば)特段違和感を感じないだろう。
さて、社保庁による年金記録が不備だった問題についてはどうだろう?上記のロジックを当てはめれば、
社保庁当局の「経営責任の明確化」を含む業務改善命令が出されるべきだろう。
しかし、三菱東京UFJ銀行とは異なり、社会保険庁は厚生労働省の外局に過ぎず、それは政府の一部であり、さらにそれは立法府たる国会の決定した法に従って活動する。その意味で、
与党、首相、厚労相、社保庁長官といった人々は、他の人々と比較して特段大きな責任があると言わねばならない。企業や銀行でいえば経営者にあたるのは、これらの人々である。
しかし、
自民党は労組(全国社会保険職員労働組合(旧自治労国費評議会))を悪者にしようと躍起になっており、それに同調して広めようとする者がいる。しかし、彼らは上記の三菱東京UFJ銀行の問題に対して、(突然何を思ったか)当該銀行の「労組が悪い!」と言っているに等しい。これは極めて
不自然な主張である。
言いたいことはここまで。以下は補足。時間と労力の関係上、雑駁に書く。
そもそも、社保庁の現場の職員が悪いとしても、彼らが年金記録を扱うのは「労働組合の組合員として」扱っているのではなく、「社会保険庁の職員として」扱っているのである。窓口で接客する際も、彼らは「労働組合の組合員として」接客しているのではなく、「社会保険庁の職員として」接客しているのである。
社会保険庁の職員と労働組合の組合員は同じ人物ではあっても、組合員であることは、あくまでも当局との労働交渉をする際の関係であって、年金記録を扱うなどの業務を行うのは社会保険庁職員としてである。
そして、当たり前の話だが、
社会保険庁職員は労働組合の命令で動くのではなく、社会保険庁当局の、上司の命令によって業務を行うのである。労働組合が働きかけることができるのは社会保険庁の当局との交渉においてであるが、労使の合意がなされて労働条件が決められるのである。つまり当局は合意しているのであり、その当局が部下である職員に、合意に基づいた範囲内で命令を下すのである。
おおよそこうした関係にある中で、労働組合をとりわけ非難し、責任を問う理由はない。労働組合の要求が不当なものだと感じられる場合であっても、それは当局と合意した範囲内でしか実施されないはずである。
だからこそ、普通、三菱東京UFJ銀行の場合のように、経営側が責任を問われ、労組など話題に上ることはない。
したがって、
今回の年金記録漏れ問題の場合だけ、特別に労組が取り上げられることはむしろ恣意的であると見なければならない。そもそも、言い出している人間(自民党)は、本来責任を問われるべき人間たちである。そのような人間たちが突飛なことを言っていることを鑑みれば、
自民党が取っている態度は単なる責任逃れであって、自民党から見て煙たい勢力を糾弾しようとしているプロパガンダであることは、誰の目から見てもミエミエである。
そのような不自然な論理であるにもかかわらず、労組が悪いとブログやBBS等で書いている人って……
自民党のネット工作員か?って感じである。(笑)
なお、余談になるが、プロパガンダは旧ソ連で発達し、ナチス・ドイツで多用された。この調子では、後の歴史では、アベ・日本でも多用された、と記述されることだろう。
どうでも良いが、タイトルはヤスパースの本の邦訳タイトルをパクリ。
ヤスパース 『戦争の罪を問う』

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