「皆さんが僕のことがすごい嫌いになったのは、むちゃくちゃもうけたからですよ。2000億(円)くらい、もうけたんではないでしょうか」
(06年6月5日、村上世彰被告、逮捕直前の会見)
ちがうな。
「儲けたから」嫌われたのではない。
もし、「儲けたから」嫌われたのなら、「孫正義」(ソフトバンク)や「みのもんた」や「宇多田ヒカル」や「柳井正」(ファーストリテイリング社長)も「村上と同じように」嫌われていないとおかしい。
村上はしばしば「株主」の利益を持ち出してはいた。しかし、「株主」を持ち出しはしても、それは短期的な利益を最優先にしているだけであり、
「企業を育てる」とか「人――従業員の技術や専門性――を育てる」とか「顧客とのつきあい」という類の発想(概して、他者を尊重しながら中長期的な視野に立った発想)を壊してしまうからではないか。
株主は投資先をいくらでも変えられるが、企業に働く人はそれほど次々と変えられるものでもないし、(専門性などを考慮すると)変えるべきでもない。そうしたところを省みない発想で、それも
「力づくで」進めていこうとすることに対して(大抵の人はそれほど具体的に理解していないとしても)嫌悪感を感じるのではないか。
私が思うに、それが村上が嫌われた理由である。
例えば、阪神ファンが不安や嫌悪感を感じるのは村上ファンドのそうした短期的な儲けや宣伝だけを目的としているところであろう。名前が変わるとか、そういうことが問題の本質ではないはずだ。
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