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2008/12/16

連続ブログ小説リターンズ『桜色ノ空』第六話。  桜色ノ空


 「車とめて。」



石畳の脇の雑草の生えた土手に車を停めた。

車から降りて、伸びをしながら、僕は辺りを見回した。




「おぉ、いい感じだ。」




彼女も車を降り、スカートのすそのしわを直した。


「ここ。ここ。ここが好きなんだ〜。
風情があるでしょ?


昔から好きでさ、自転車でよく来たんだ。
親に怒られて家出したときとか、友達と喧嘩したときとかね。


あそこにベンチがあるでしょ?あそこに座ってさ、川に飛んでくる白鳥とか、鬼ごっこしている男の子たちとか、イチャイチャしているカップルとか一日中見てるんだ。
何時間も。


日も暮れてコウモリが飛び始める頃に、お母さんが迎えに来るんだ。
それまでは来ないの。

いつもここにいること分かってたし、ここにいることで私が元気になるの知ってたから。小さいときからそうらしいの。

変な子だよね。


最近はあまり来なくなったけどね。
つらいことがあると来るんだ。」




そんな大切な所に連れてきてくれたことがうれしかった。

初対面の僕を。




「そうなんだ。たしかにいいところだね。なんか落ち着く。」


「わかる?うれしい。あまりここの良さ分かってくれる人いないから。ね、座ろう。」


「うん」


「お菓子食べる?ポテチでいい?」


「いいよ。」




多少苦労してポテトチップスの袋を開け、ベンチに置いて、彼女はひとつほおばった。


ばりばり。



「美味しい。やっぱポテトはのり塩だね。」



それから彼女はポテトチップスを食べながら、しばらく話をしていた。



中学時代、初めて出来た彼氏とここに来たとき雨が降ってきてびしょびしょになったこと、

その彼との別れ話もここだったこと、

その時桜が満開だったこと、

自転車で駆け抜けるとかごの荷物が飛び散りそうになること、

雪の日に大きい雪だるまを作ろうとして、頭を上げられずに寝たままにしたこと、



いろいろな話をほんとうに楽しそうにしていた。



僕は「うんうん」「それで」と相打ちをしながら、彼女の表情につられるように、心からわらったり、悲しい顔になったりした。







一通り話し終わると、しばらく二人とも黙って川を見ていた。


日も傾き、少し日ざしも弱くなってきていた。




彼女の横顔は透き通るようで、若さと憂いを合わせたような美しさを川に反射した夕陽がゆらゆら映していた。



「カメラ」



と思ったが、すぐそれは止めた。



その空気を壊したくなかった。

それに神々しいほどの美しさが、撮ってはいけないもののような気にさせていた。

そのまま、だまって座っていた。




(つづく・・・)
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