Welcome to uchi-cafe☆Since 2005.5.25☆Moving 2006.4.24☆Moving 2008.7.4☆Photo & Sho by tep-pei

2008/12/11

連続ブログ小説リターンズ『桜色ノ空』第一話。  桜色ノ空

『桜色ノ空』      折口 一八十








「写真、撮らせてもらってもいいかな?」




僕が写真を撮るのに、他人に声をかけたのはそれが初めてだった。

幼い頃から引っ込み思案だった僕は、知らない人が来るとすぐ母親の後ろにかくれてしまうような子だった。



大人になってもそれはあまり改善せず、大勢の人の前に出るとうまくしゃべれなくなってしまい、手に汗をかき、どもってしまうことがよくあった。

知らない人に声をかけるなんて思いもよらないことだった。




ましてや女子高生になんて…。


しかし、彼女にはそうさせてしまう何かがあった。




 「いいよ。」




スカートの裾を「ぱんっ、ぱんっ」とはたきながら、彼女は立ち上がった。

まるで、幼なじみか、親戚のお兄さんに声をかけられたように自然だった。




声をかけておきながら、僕は多少面食らった。




空は青く、いつもより暖かい気候が山々の木々を水彩色に染めていた。






「どこで撮るの?」

「そうだな…」





全く考えていなかった。

とっさに声をかけてしまっていたので、イメージも何もなかった。


ただ彼女をカメラに収めたかった。



「じゃ、とりあえず、そこの壁の前に立ってみて。」



スーパーの脇の油に汚れた壁の前に彼女を立たせて、ファインダーを覗いた。



「ね、どんなポーズを取ればいいの?あまり撮られたことないから、どんな顔していいかわかんないよ。」


照れ笑いしながらそう言った。





「普通でいいよ」

「普通が一番難しい」





そうかもしれなかった。





「普通」。





何が普通か。

そんなものないのかもしれなかった。



ただありのままを撮りたかった。




「じゃ、歩ってみてくれる?」

「こう?」



歩くと、春の風にスカートがひらりと舞った。





(つづく・・・)
0



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ