襟裳岬から登別温泉に入り、室蘭から今フェリーに乗った。
さっき、少し感情の行き違いがあった。
フェリー乗船後、車に忘れた荷物を二人で取りに行った。ついでにフロントで毛布を借りることにした。二人の陣取った場所は、展望室で二階の甲板にあり、車は地下。フロントは一階なので、降りるついでにフロントへ寄ろうと思った。
出航まで間もなくで、出航したら車の置いてあるところは立ち入り禁止になってしまうので急いで行った。
車に忘れた物とは地図なんだけど、なかなか見つからない。「どっかに置いてきちゃったかな?」と私が言うと、彼は「知らない」、としかめっ面をしてどこかイライラしている。凄くせかされているようで、それに私はしかめっ面をされるのがとてもいやなので、地図が見つかると急いで階段を上がった。フロントで毛布を借りようとしてると、彼は私を追い越して展望室にかけ上がってしまった。毛布二枚と残された私。ほかにも荷物を出したので手がふさがってるのに更にかさ張る毛布二枚を引きずりながら、なんで手伝わないかな〜と、むかむかして来た。この毛布だって、二人で使うものなのに。
途中まで階段を上がると、彼はひょこひょこ降りて来た。私は彼をにらんだ。彼は縮こまって毛布を一枚受け取った。
展望室の場所に戻ってからもなんとなくぎこちない。いつまでもそうしている訳にもいかないので、話題を変えて明日のルートの話を振ったところ…
彼は突然さっきの毛布の一件の弁解を始めた。
実は…彼は車に荷物を取りに行ったとき、あわてて違う人のサンダルを履いて来てしまったのだった(展望室は土足禁止のため入り口で靴を脱ぐのだ)。車のとこで気がついて、早く戻りたかったが、地図が見つからず、長引きそうなのでしかめっ面をしてしまった。地図が見つかったので、一目散にサンダルを自分のと取り換えにかけ上がった。
私が思っていたのと全然違う。(私はただ、時間がかかってイライラしたので私を置いていったんだと思った。)私は早く言ってくれればいいのにな、とも思いながら、にらんだことを謝った。(そう、なんだかとても微笑ましく、彼らしい事情があったのだった。)
あらゆるシーンで、あらゆる人と、こういう行き違いが山程あって、ほんとに疲れたり、いやになったり、理解できなかったり、うんざりしたり、する。その度に、自分の器の小ささを思い知る。それは後で考えれば大半が思い違いだったり、相手にも立場や事情があったり、さらっと流せば済むことだったりするからだ。めちゃくちゃ深くて大きな人間になりたかったのに、どうしても広がっていかない自分を認識する。
北海道にきたのは11年ぶりだ。一度も忘れず、また来たいと思っていても、来るまでに11年もかかってしまった。11年前に来たところを通ると、たまにぴたっとその当時の情景を思い出したりする。私の器はあの時よりも、深く広く、なっただろうか。ふと頭をよぎる。「ちっとも変わっていないのではないか…」愕然とする。恐怖する。
ぞっとして、室蘭の港を見ていた。この11年と、これからの11年のことを考えていた。

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