2021/12/5

5757:真珠の小箱  

 新たなCOPULARE社の4段ラックに収められていたオーディオ機器は、上下でくっきりと二つに分かれていた。

 上に2段には、NAGRAのCDトランスポートとDACのコンパクトな姿があった。横幅は25cmほどしかない。奥行きはそれよりも長いが、全体としてとても小さい。こういったサイズ感にこのメーカーのセンスの良さをしみじみと感じる。

 下半分はKRELLのグレーが占めている。艶消しのグレーである。そこにブラックが混じり、武骨で男性的な質感である。

 COPULAREのZONAL4は、前の3段のものと色合いが変わった。支柱部分がブロンズで、棚板がブラックである。こちらは艶やかな塗装が美しい。

 WILSON AUDIOのCUBは背後の壁からは1.5メートルほど離されている。側面の壁からもそれぞれ1メートほど離れている。内振りはつけられていない。ラックは後方の壁に近い位置にある。

 リスニングルームはそれほど広いわけではないが、オーディオセットと椅子、それとCDなどが収められた縦型のキャビネットがあるだけなのでそれほど狭いとは感じない。

 リスニングポイントに座って、グールドさんとしばし談笑した。グールドさんは1年ほど前に長く務めた会社を定年退職し、その後は再雇用契約を結んで週に4日働いている。

 「給料は約3分の1で、任される仕事もそれほど大変ではないので、まあセミリタイアといったところです。今は4日の内3日はテレワークですし・・・」と話されていた。

 グールドさんが最初にかけてくれた曲はバッハのゴルドベルグ変奏曲であった。しかしいつものようにグレン・グールドの演奏のものではなかった。

 ランランの演奏であった。ピアニストにとって、バッハのゴルトベルク変奏曲は、その芸術性と華麗さにおいてピアノ芸術の最高峰の一つであり、難曲とされる。ランランの演奏もその難曲に対峙する高度な集中力が感じられる名演であった。

 アリアから始まり、第7変奏曲までを聴かせてもらった。当然ではあるが送り出しがKRELLの一体型CDプレーヤーからNAGRAのセパレートに変わったので、音の印象も大きく変わった。

 「やはり、違うものですね・・・精細な質感が段違いに良くなりましたね・・・ガツンとくる感じはKRELLの方があったかもしれませんが・・・」

 「そうですね・・・NAGRAってやはり凄いと思いました。こんなにコンパクトなんですが、実に精巧で、その音の質感は唸らせるものがあります。これ見よがしでないところが本当にセンスが良いですよね・・・大人の音です・・・本当の意味で・・・」

 続いて聴かせていただいたのはベートーベンのピアノ協奏曲第3番であった。マリア・ジョアン・ピリスのピアノである。共演はダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団である。

 録音は2013年10月。一音一音が実に丁寧で、フレーズの流れとその変化を大事にしながらの演奏である。音楽の内面を瑞々しく表現している。ピアノ協奏曲第3番を書き上げた30代前半のベートーヴェンの情熱がしっかりと伝ってくる。

 「良いですね・・・NAGRA・・・」と独り言のように呟いた。「私、こういうコンパクトなオーディオ機器って大好きなんですよね・・・NAGRAもそうですが、LINNなんかもコンパクトですよね・・・大きく重い方が高級といった価値基準とは全く逆の製品・・・実に良い感じです・・・」と、その後に続けた。

 最後にかかったCDは、グレン・グールドのピアノによる、R.シュトラウスのピアノソナタであった。なんとこの曲は、R.シュトラウスが16歳の頃の作品である。

 「天才」という言葉がついつい頭に浮かぶ。天才ということではグレン・グ−ルドも紛れもない天才である。「天才+天才=一種異様な美しさ」という感じで、惹きこまれるままに無心で聴き進んだ。

 KRELLとはまた違う魅力に溢れるNAGRAであるが、私は明らかにNAGRAの音の方が好きである。その姿も「真珠の小箱」と呼びたくなるほどで魅力的であった。




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