2020/11/27

5379:鶯色  

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 我が家のリスニングルームある2脚のアームチェアのうちの1脚は、アルネ・ヴォッダーがデザインしたものである。

 アルネ・ヴォッダーのアームチェアは、彼の他の作品が常にそうであるように、上品で高級感が漂う造形美を誇っている。

 今となっては貴重なチークを使った木部の木目が非常に美しい一脚である。特に肘掛部分の造形は個性的である。

 眺めているだけでも楽しめるほどの造形美の持ち主であるこのアームチェアの座り心地はしっかりとしたもので、この椅子に座ると気分はくつろぎながらもどこかしらしゃきっとした心持にさせてくれる。

 それにしても製作されてから60年ほどの年月が経過した木部の手触り感は素晴らしい。いつまでも手で触っていたくなるほどに優しく、自然な質感である。

 こういった上質なヴィンテージ家具は、間違ってもウレタン塗装を施して不自然な光沢を与えてはいけない。それですべてが台無しになってしまう。

 柔らかな色合いのファブリックは、「鶯色」と評すべきものであろうか・・・どこかしら「和」のテイストをも感じさせる色合いである。

 そのアームチェアの脇に置かれた小ぶりなサイドテーブルの上には、ヨハンナ・マルツィのレコードが置かれている。私の愛聴盤の1枚である。

 シューベルトのソナチネが3曲とヴァイオリンソナタが1曲納められている。2枚で一組になるうちの1枚である。こちらには、ソナチネの1番と2番が入っている。

 そのジャケットの色合いは渋い。アルネ・ヴォッダーのアームチェアのファブリックの色合いと呼応するかのように鶯色である。ざらっとした質感の素材がジャケットに使われていて、その装丁は実に丁寧で豪華である。

 最近よく聴くメロディアの共通紙ジャケットとはある意味雲泥の差がある質感であるが、最初は「なんだこれ・・・」と思ったメロディアの共通紙ジャケットも見慣れてくると、どこかしら愛おしく思われるのであるから、人間の感覚とはあやふやなものである。

 アルネ・ヴォッダーがデザインしたアームチェアに座り、ヨハンナ・マルツィのヴァイオリンによるシューベルトのソナチネ第2番を聴いた。

 実に「鶯色」な響きである。華麗で伸びやかであるが、高貴さの中に包まれていて、決して物質的な豊かさや喧騒の渦まく世界には降りてこない。木々の細い枝にのみ留まり、枝から枝へ飛び移り、やがて空に向かって飛翔する鶯のようである。

 マルツィの音楽は、華麗で典雅な、それでいて、時折迫力すら感じる声量で鳴く鶯の鳴き声ように、心に響く。

 オリジナル盤のレコードを聴く楽しみの一つは、その品位の高さである。これが復刻盤になると失われてしまうのが、不思議である。 




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