2020/5/15

5179:DACU-500  

 大川さんはコーヒーを淹れるために、一旦リスニングルームから出ていかれた。待っている間、オーディオラックの方を改めて眺めてみた。美しいデザインのオーディオ機器が特注と思われる大型のオーディオラックに整然と佇んでいた。

 COPLANDのアンプ郡は、北欧製らしい清涼感のあるフロントパネルが目に優しく、ORACLEやZandenは、その稀有な個性を工芸品の領域まで昇華させている。

 そしてKRELLの純正ペアはアメリカンハイエンドの勃興期における熱量の高さを、その姿から自然と発散させていた。

 それらは、そこにあるだけでも一種の陶酔感をもたらしてくれるような機器たちであるが、大川さんが新たに導入したという「面白いもの」は、見当たらなかった。

 「もしかしたら、音響調整用のアクセサリーであろうか・・・」とリスニングルームの壁や天井を見回した。オーディオマニアのリスニングルームには、かなりの確率で音響調整用のアクセサリーが設置されている。しかし、大川さんのリスニングルームにはそういった類いのものが見当たらなかった。

 ややあって、大川さんがコーヒーを持ってこられた。それを飲みながらの雑談タイムが始まった。

 話題の主は当然コロナウィルスである。大川さんは今年の12月で60歳を迎え、定年退職となる。再雇用契約により65歳までは働けるが、給与は3分の1ほどまでに下がるようである。

 「子供も独立したし、住宅ローンも終わったので、贅沢をしなければ、経済的に困ることはないけれど、張り合いというか、精神的な面において、少し心配かな・・・広告業界は、このコロナ騒動の影響を大きく受けますので、もしかしたら再雇用そのものすら危うい状況になるかもしれません。」

 やはり、多くの方にとって、このコロナ騒動は暗い影を投げ掛けているようであった。しばしの雑談タイムの後、「実は最近、とある知人から紹介されて面白いものを手に入れましてね、それがこれです・・・」と小さな黒い箱を手に取られた。

 そしてそれが私に手渡された。とても小さな箱で箱の蓋部分に白いシールが貼られていて、そこには「DACU-500」と記されていた。

 箱のなかに入っているものの型番のようであったが、メーカー名の記載もなく、中身がなんなのか全く見当がつかなかった。
 
 その箱を開けてみた。そこにはRCAケーブルのプラグが1個入っていた。通常のプラグと違うのは、その長さである。通常のプラグの3倍くらいの長さがある。

 さらにその後端には別のRCA端子を挿入できる構造になっている。後ろにRCAケーブルを指して、その上で機器に接続させるような構造である。

 そのプラグ部分には「ORTHO SPECTRUM」とプリントされていた。「これがメーカー名であろうか・・・全く知らないな・・・しかもなんで1本だけなんだ・・・」と、少し狐につままれたような表情になっていた。

 その様子を窺っていた大川さんは少し微笑みながら、その「面白いもの」の詳細について説明してくれた。




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