2020/4/22

5156:散歩  

 「健康維持のための散歩はいいそうだから、散歩でも行かない・・・?」と、上の娘が言いだした。

 昼近くまで寝ていて、その後もソファでゴロゴロしながらスマホを眺めていたようであったが、さすがに飽きてきたようである。

 「それいいね・・・行こう・・・」と同じようにだらだらと過ごしていた下の娘も同調した。大学はしばらくは休校状態のようである。

 日曜日の午後、天気は最高である。私は午前中の単独ライドで相当量のカロリーを消費していたが、「じゃあ、一緒に散歩でも行くか・・・」と応じた。

 妻は「私は家事で疲れているから、3人で行ってくれば・・・」とのことである。心配性の妻であるが、近所の散歩に関しては寛容であった。

 ということで、日曜の午後3時ごろから3人で散歩に出かけた。我が家から歩いてすぐのところに多摩湖の堤防がある。

 東村山音頭の歌詞にある「庭先きゃ〜多摩湖〜」という感じなのである。愛犬が生きていた頃は散歩コースとして多摩湖の堤防は定番であった。

 3人は自然と多摩湖の堤防の方向へ向かった。気温は高い。20度くらいある感じであった。上着がなくても大丈夫で、長袖のシャツだけでちょうどよかった。

 数分歩くと多摩湖の堤防に着く。しかし、3人は多摩湖の堤防の入り口で立ち止まった。すごい数の人であった。

 家族連れの散歩、ウォーキング、ジョギング、犬の散歩、サイクリング・・・などなど数多くの人々が多摩湖の堤防、さらにはその東側にある狭山公園に集まっていた。

 「あれ・・・いつもよりも明らかに人の数が多いな・・・」とその景色を眺めながら思っていると、上の娘が「これって危なくない・・・?」と、若者特有の尻上がりのイントネーションで問いかけた。

 「ちょっと人が多いね・・・」と私が答えると、下の娘は「密閉ではないけど密集と密接は、少しかかってるよね・・・?」と応じ「二密だよ・・・二密・・・三密じゃないけど・・・」と続けた。

 「どうする・・・?」と訊くので、「コースを変えよう・・・東大和公園に行こう・・・あそこなら人は少ないよ・・・」と答えた。

 多摩湖の堤防の傍には広い駐車場がある。きっと今日は満車であろう。車で来て、多摩湖周辺を散策する家族連れが多かったのであろう。

 3人は踵を返して坂を下っていき、東大和公園を目指した。東大和公園は、多摩湖の南にあり、昔の狭山丘陵の面影を残している公園である。

 雑木林の中を狭い回遊路が巡っている。駐車場もなく場所も少しわかり辛いので、地元の人が時折散策や散歩をするぐらいで、とても静かな場所である。

 多摩湖の堤防入り口から10数分歩くと東大和公園の一つの入り口に到着した。そして雑木林が広がる丘陵地帯を3人で歩いた。

 今は新緑の季節である。淡い緑色の若々しい葉に日が当たりとても美しい。自然は人間界の騒動とは無縁のリズムでしっかりと時を刻んでいた。

 「散歩も場所を選ばないと、危ないね・・・」と言うと「私なんか・・・明日からまた電車通勤だからね・・・山手線にも乗らなきゃならないし・・・いつもよりも空いているけど、がらがらというわけじゃないからね・・・」と上の娘はこぼしていた。

 3人は無駄話をしながら東大和公園の遊歩道をしばしの時間歩いた。丘陵地帯なのでそれなりのアップダウンがある。
 
 稀に雑木林を抜けて開けたところに出る。見晴らしの良いところがあった。「見晴らし良いね・・・」と、そこから住宅地の方を眺めた。

 様々な色の屋根があった。その屋根の下には家庭があり、人々の暮らしがある。のんびりと過ごしている人もいれば、不安と焦燥感に駆られている人もいるであろう。

 「あれ、うちじゃない・・・?」と下の娘が言った。そして右斜め方向を指さした。そこには小さく我が家が見えた。

 「あっ・・・そうだね・・・あれだね・・・ここから見えるね・・・」とつぶやいた。我が家もここから小さく見えた。こんなに遠くから自宅を眺めることはほとんどない。

 数多くの住宅の中の一つとして、すっぽりと風景の中に嵌りこんでいた。「あの家でもう22年か・・・」過ぎ去った時間の長さがふと思われた。 




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