2020/3/30

5133:オレンジ  

 「ゆみちゃん」は、「ねこ」の4枚目となる最新アルバムが収録されたカセットテープをSONY CF-2500に装着した。

 そして綺麗に並んだボタンのなかから「PLAY」ボタンを選択して押し込んだ。カセットテープはするすると回転を始めた。

 カセットテープなのでレコードと同様にA面とB面がある。A面の1曲目がCF-2500の小さな二つのスピーカーから流れだした。

 アコースティックな楽曲であった。アコースティックギターを中心としたの伴奏に静かなボーカルが乗ってくる。

 「このアルバムはアコースティックな感じでまとめられていて・・・少し雰囲気が変わったかな・・・」と彼女はその印象を語った。

 「ねこ」のニューアルバム「ねこ降らし」をSONY製のラジカセで聴きながら、いろんな話題について彼女と話した。

 当然今日本だけでなく世界中に猛威をふるっているコロナウィルスに関する話題にもなった。マスク、買い占め、外出自粛など身近な日常生活に直接的な影響を及ぼしていることについて話しているとき、ふと思った。

 「彼女は時折人間の背後に広がるオーラが見えると話していた。私も今まで何度か自分のオーラーの色合いについて彼女に訊ねたことがあった。もしかして、コロナウィルスに感染しているかどうか、オーラの色合いで確認できるのではないか・・・」

 そこで、彼女に切り出した。「私のオーラの色合い・・・変わったところはないかな・・・自覚症状は今のところ全くないのだけど・・・今回のコロナウィルスの怖いところは感染しても症状がすぐに出ないので、それと気付かないで感染源になる可能性があることなんだよね・・・」

 すると彼女は視線を私の背後に向け始めた。私と彼女の間にはカウンター席一つ分の空間がある。その空間越しに私のオーラの色合いを確認しているようであった。

 検査結果を待つ患者のような気分になった。ややあって、彼女は私の視線を正面からとらえた。そして話し始めた。

 「別にウィルスに感染したからといって、オーラの色が真っ赤になるとかそういった明確な変化はありません。体調が悪かったり、ストレスが溜まっていたり、風邪気味だったりすると、その色合いがくすんで見えるという変化しかないのです。そういう意味合いで多少色合いがくすんで見えますね・・・」

 「でも、色合いはグレーや黒ではありませんから・・・生命の危機に瀕しているわけでは決してないと思いますよ・・・この時期、みんなストレスが溜まっていますから色合いがくすんでいたりオーラそのものの大きさが小さくなるのは通常のことだと思います・・・」

 「私もいろいろ不安になりますので、家には明るい色合いの花を飾るようにしています。こういう時は、オレンジやピンクなんかがいいんですよね・・・」

 彼女はいつになく静かな口調であった。どちらかというと童顔であるので、年齢の割に若く見える「ゆみちゃん」であるが、今日ばかりはその表情はとても大人びたものに見えた。

 そして、薄茶色の紙袋の中に入っている花束を見せてくれた。「帰りがけに花屋で買ったんです。3,000円もしたんですよ・・・これを部屋に飾ると少し元気になりそうです・・・色ってとても大切なんです・・・」

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