2018/7/27

4518:喪失  

 酷暑は不意に去った。身の危険を感じるほどの暑い日々がしばし続いていたが、数日前にその暑さは和らいだ。

 それでも最高気温は30度ほどまで上がるのであるが、37度を超えるような最高気温を体験していたので、涼しく過ごしやすく感じられた。

 今日もその傾向は続いていた。風が少しあり、日陰に入ると、暑さにげんなりするような感じはなかった。

 台風が近づいているようで、明日からは天気も大荒れになるとのことであったが、今日はまだその兆候は表れてはいなかった。

 私は、フォルクスワーゲンのポロのハンドルを握りながら、「もうあのような異様な暑さは戻ってこないかもしれない・・・」と思った。

 それは多少希望的観測も入っているのかもしれないが、日本の季節は徐々に前倒し傾向にあり、暑さのピークも1ケ月ほど早くなっているのではと憶測していた。

 すると、しばし続いた酷暑が今年の夏の暑さのピークで、それが去ったこれからは、意外と過ごしやすい日々が続くのかもしれない。

 私は旧青梅街道を走り、瑞穂町方面へ向かっていた。今日は「寧々ちゃん」の自宅へ向かい、遺産分割協議書と相続税の申告書に署名・押印してもらう予定であった。

 彼女の夫が59歳という若さでこの世を突然去ったのは昨年のことであった。くも膜下出血で、それは不意に訪れた。

 こういう形で家族を失うことは、心の準備ができていないので、その喪失感は深く辛いものであろう。

 それからしばしの月日が経過して、その喪失感の中に埋もれてばかりもいられないことを理解した彼女は、その遺産の処理について私に相談した。

 彼女の夫が残したものは、ささやかな自宅と、多額の生命保険金、そして大量のレコードなどであった。

 彼女の夫にとっての「お宝」であった1万枚を超える枚数のレコードや高価なオーディオ機器はすべてお金に変わった。

 そして不動産と預貯金も今回の手続きが済むと、彼女と彼女の一人娘に分配される。彼女の夫は普通のサラリーマンとしては比較的高額な保障の付いた生命保険に入っていたこともあり、今後の彼女の経済状況は全く心配のないものとなった。

 彼女の一人娘は現在26歳、独身で一緒に住んでいる。父親を急になくして取り乱す年齢ではないはずであるが、その心のうちには大きな穴が開いてしまっているかのもしれない。今日は彼女の署名も必要なので、家にいるはずであった。




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