2017/9/29

4218:餅  

 年季の入ったバウルーでじっくりと焼かれたホットサンドは小麦色の良い色合いに仕上がっていた。

 そして、その断面からは具材が垣間見えていた。その断面をすかさず盗み見たが、「Mimizuku」の照明は薄暗く、その内実をしっかりと確認することはできなかった。

 「何が入っているのかな・・・」と訊くでもなく呟くと、「ゆみちゃん」は、半分に切り分けられたホットサンドをさらに半分・・・4分の1にナイフを使って切り分けた。

 その小さくなった三角形の一つを皿の端へ寄せて、皿ごと私の方へずらした。そして、少々いたずらっぽい目付きで「当てて下さい・・・」と言った。

 その表情には「きっと外れる・・・」といった少し含み笑い的なものが含まれていたようである。そうくると、こちらも挑戦しようとする闘争心が湧く。

 その小さな三角形をゆっくりと口に含み噛みしめていった。そして舌の上の味覚中枢に神経を研ぎ澄ましていった。

 「たらこ・・・いや明太子かな・・・味のアクセントになってますね・・・それとキャベツにチーズかな・・・ちょっと和風かな・・・」

 私がそう話すと、「ほとんど当たってます・・・たらこです・・・それをマヨネーズで和えて、キャベツの千切りとチーズです。それに大葉を細かく切って少しキャベツに混ぜているんです・・・」と彼女は中身の正解を答えた。

 「なるほど・・・なかなかいい感じ・・・」

 「そうですか・・・良かった・・・」

 「オリジナル・・・?」

 「いえいえ、インターネットでレシピが載っているんです。ホットサンドで検索するといろんな具材が出てきますよ・・・」

 「そう、じゃあ当分楽しめるね・・・」
 
 彼女は、4分の3となったホットサンドを頬張りながら「まずまずかな・・・合格って感じ・・・でももう一つなにか欲しいかも・・・」と独り言のように呟いた。

 私はとあることを思い出した。「餅はどうです・・・セブンイレブンで売っているブリトーに『明太もちチーズ』って商品があって、結構うまい組み合わせだと思ったことがあった。」と話した。

 「あ〜なるほど・・・それいいかも・・・もちもちな柔らかい食感になりそう・・・」と彼女はホットサンドを咀嚼しながら、口の端から言葉を漏らした。

 「ところで、カセットデッキはどう・・・?」私は先日彼女と一緒に行って、中目黒の「Ruts」で購入したカセットデッキについて訊いてみた。

 「Ruts」はカセットテープに関する商品を専門に扱っている店であった。豊富なミュージックテープの在庫に驚くと共に、センスの良い店の内装に感心した。

 その店の片隅に展示されていたカセットデッキから彼女が選択したのはYAMAHA K-8であった。昔カセットデッキはレコードからカセットテープに録音するのが主目的であったが、彼女にとっては購入したミュージックテープを再生するのが目的である。

 「やっぱり良いですね・・・低音が全然違います。買ってよかったです・・・かっこも良いし・・・」

 と彼女は話した。どうやら、YAMAHA K-8は彼女の部屋でその役割を十分に果たしているようであった。

 ふっと先日「Ruts」でしげしげと眺めたYAMAHA K-8の白く端正な姿を脳内スクリーンに思い出した。

 そして、意味もなく「やはり餅だよ餅・・・」と先ほど「ゆみちゃん」と話していたホッドサンドの具材のことが頭の中でくるっと回って蘇った。 




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