2017/3/28

4033:あわ大福  

 できあがったナポリタンを食べてると、「Mimizuku」の扉が開いた。扉に取り付けてある鈴が乾いた音をたてた。

 期待感を込めてそちらに視線を移した。しかし一瞥して、そのシルエットが私が期待したものとは違うことが分かった。

 初老の男性が一人入ってきた。男性の髪は短く刈り上げられていて、額の当りが薄くなりM字状に額がせり上がってきていた。

 その男性は奥まったところにある2人掛けのテーブル席に座った。女主人が、ガラスコップに入った水とおしぼりを持っていって、二言三言話した。

 私は再びナポリタンに向かい合った。ナポリタンはどこかしら昭和の香りのする食べ物である。

 「Mmiuzku」では、白いお皿に盛られるが、これが銀色の金属製の楕円形皿に盛られているとさらに「昭和感」が増すであろう。

 最近レコードやカセットテープが人気と聞く。喫茶店のナポリタンも人気が出ているようである。どこかしら共通するものがあるのであろうか・・・

 「Mimkuzku」では軽食として、ナポリタン以外にホットサンドも出す。ホットサンド用の金具を使い、周囲がしっかりと閉じ合わされる。焼き目が綺麗に付いたホットサンドの具材は定番のハムとチーズである。

 一時「ゆみちゃん」はホットサンドに嵌っていた。やがて、その興味はちょっと変な方向に向かい、具材を自分で買ってきて、女主人に頼んでそれを中に挟んでホットサンドを作って貰ったりしていた。

 その特注具材の中には普通の感覚では「?」マークが盛大に頭の中に浮かんでくるようなものも含まれていた。

 彼女は「これはいける・・・」として目を輝かせて食べていたのは具材が「肉じゃが」のホッドサンドである。

 お総菜屋さんで購入した正真正銘の「肉じゃが」である。それをホットサンドの具材にするのは、なかなか思い付かないであろう。
 
 さらに「これも良い・・・」と喜んでいたのは、具材が大福餅であった。特に一時嵌ったのが、「紀伊國屋」の「あわ大福」を具材としたホットサンド。

 これは私も半分もらったことがある。「おいしいですよ・・・」と彼女に笑顔で言われたが、私は半信半疑であった。

 恐る恐る口に運んだが、予想に反してなかなかいけた。「名古屋ではあずきトーストが人気というし、これはこれでありかな・・・」頭の中でそう思った。

 「あれっ・・・これはありだね・・・」私がそう言うと、彼女は「そうでしょう・・・」と嬉しそうに笑った。

 しかし、そのブームは彼女の中ですでに去ってしまったようであった。私は時折あの「あわ大福ホットサンド」の味が思いだされる。そして、もう一度食べてみたくなる。

 ナポリタンを食べ終えようとしていた頃、再度扉の鈴が鳴った。「カラン・・・カラン・・・」と鈴は二度乾いた音を店内に響かせた。その響きは短い余韻を残して天上の方へ消えていった。




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