2015/8/28

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 最初にSONY PS-2510のターンテーブルに乗せられたのはフランスのプログレッシブロックバンドEtron Fou Leloublan のセカンドアルバム「 Les Trois Fous Perdégagnent」であった。このA面の1曲目がオープニングとなった。

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 この曲が実にかっこ良かった。ちょっとフリージャズ的な要素も取り入れていたが、一捻りいや二捻りほど捻った疾走感が独特の爽快感をもたらしてくれる。

 「これは、良いですね・・・」

 そうふと呟くと、Tさんは妙に嬉しそうな笑顔を見せた。

 「エトロン・フー・ルルーブランの曲を良いというのは、相当な許容力がありますね・・・結構ディープなものも大丈夫ですね・・・ほとんどの人は、こういうのは、まず受けつけないんですよ。じゃあ、ファーストアルバムもいってみますか・・・A面の1曲目で・・・冒頭のアコースティックギターの独奏が最高ですよ・・・」

 そう言って、Tさんはレコードを入れ替えた。こちらも極めて印象的な曲である。曲は理知的な構成を次々に打ち破る破天荒な展開で進みながら、どこかしらユニークで、詩的でもある。

 「これはパクチーのような味わいですね・・・癖のある味ですが、一度入り込むと、抜け出せない旨みがあります。」

 Tさんの破顔振りは、少々見ものであった。よっぽどいままで孤独であったのであろうか・・・

 「エトロン・フー・ルルーブランはやはりファーストとセカンドが素晴らしいです。その後も何枚がアルバムを出しているのですが、1976年のファーストと1977年のセカンドです・・・その後は年を追うごとにクオリティというか鮮度感が落ちていきます。」

 「次はどうしますか・・・エトロン・フー・ルルーブランはちょっと立て続けに聴くと、少し疲れるでしょから、一気に爽快感満載のスティーヴ・ティベッツで口直しをしますか・・・これは1977年のファーストアルバムです。ギターのほとばしるような演奏が、気持ち良いんです・・・」

 スティーヴ・ティベッツは、広々とした大地や風の吹き渡る荒地といった独特な情景を連想させる音楽である。

 「では少し遡ってMandrake Paddle Steamer の『Strange Walking Man』でもかけてみましょう・・・これは1969年に出たシングル盤です。ちょっと初期のピンクフロイドを思わせるところもあります。シド・バレットがいた頃のピンクフロイドです。少しサイケが入っています・・・」

 マンドレイク・ペダル・スティーマーは確かに1960年代から1970年代に移り行く時代そのものを色濃く表出しているように感じられた。一般的はほとんど知られていないバンドであり、曲であるが、隠れた名曲と呼ぶにふさわしいできである。

 1970年代のSONY PS-2510、ONKYO A7、OTTO SX-441/Uという組み合わせにより構成されたオーディオシステムは実に良い色合いでこれらのレコードを奏でてくれる。特にオーディオ的に突出したものは全くないのであるが、出しゃばらない感じで自然である。

 40年という時間の経過を経て、Tさんの音楽の好みにすっかりと馴染み順応しているからなのか、不足感がなく、穏やかな心持ちで音楽を聴くことができる。やましさのようなものが微塵も感じられない。

 次にかかったのは、Syd Barrettの「Barrett」。ピンクフロイドを離れた彼のソロアルバムである。後に狂気に走る彼の研ぎ澄まされた神経の揺れが感じられる。

 その後もCAN、GONG、CLUSTER、Van der Graaf Generator、Soft MachineのLPがSONY PS-2510のターンテーブルに乗った。

 SONY PS-2510、ONKYO A7、OTTO SX-41/Uはいずれも1970年代の製品である。どれもとてもしっかりとした製品である。ONKYO A7のノブなどに触れると、この時代のオーディオ機器独特の重厚な手応えが指に伝わってくる。触れることそのものが悦びに直結するような質感を享受することができた。

 Tさんのお宅での数時間は、とても濃い時間となった。一つの閉ざされた理想郷のような空間がぽっかりと存在していたことが、懐かしく、そして嬉しくもあった。




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