2015/8/27

3268:タイムトリップ  

 Tさんとは中野坂上にある喫茶店「Mimizuku」で知り合った。きっかけは店に置いてあるSONY製の古いラジカセである。

 私がいつものようにカウンター席に座って、故人であるマスターが残したミュージックテープのコレクションから1本を選んで、SONY製のラジカセで音楽を聴いていた。

 その時に2人掛けのテーブルに座っていたTさんが声をかけてきた。年代的に私とほぼ同じであるTさんにとっても、1970年代に製造されたそのSONY製のラジカセはとても懐かしいものであったようである。

 それ以来、店で何度か出会った。そのうち、Tさんが古い日本製のオーディオを持っていて、たいそうな数のレコードをコレクションしていることを知った。

 「一度聴かせてください・・・私も古いオーディオが好きで、レコードばかり聴いているんです・・・」

 「そうなんですか・・・古いってどのくらいの時代のものなんですか?」

 「私の場合、1950年代までさかのぼってしまうので、古いというかもはや骨董品の領域でしょか・・・TANNOYのスピーカーに、MARANTZのアンプです。レコードプレーヤーはTHORENS・・・いわゆるビンテージオーディオですね・・・」

 「相当のこだわりのシステムなんですね・・・私の場合は若い頃にどうにかこうにか手に入れたオーディオ機器を故障しても直して根性で使っているだけのものです・・・その当時は、心躍る存在だったのですが、今となってはあまりにも長い付き合いなんで、手放すことが考えられないという感じです。特にこだわっているわけではなく、ただずっとそこにあって音を出し続けているんですね・・・」

 レコードの話にもなった。TさんのコレクションはROCKのレコードが多いようで、メジャーで多くの人が知っているアーティストではなく、かなり前衛的でマイナーな存在のアーティストのものが多いようである。幾つかのアーティストの名をTさんの会話の中で聞いたが、半分くらいしか知らなかった。

 「1970年代の前衛的なROCKは実に面白いんです・・・とても混沌とした時代の空気を反映してか、摩訶不思議でスリリングです。GONGの『YOU』なんかが代表格でしょうか・・・」

 「なんとなく雰囲気が分かりますね・・・GONGやCANやCLUSTERなんかが、あの時代の最前線って感じでしたからね・・・私は中学生の頃、NEUなんかもよく聴いていました。」

 「そうでうすか・・・実にマイナーな世界なので、こういった話をできる人間ってほとんどいないんですよね・・・家族からは、全く相手にされないし・・・じゃあ、一度いらして下さい。オーディオはどうでもいいようなものですが、レコードは珍しいものがいっぱいあります・・・」

 そういった話の流れで、Tさんのお宅を訪問した。涼しい気候であったので、Tさんはホットコーヒを出してくれた。

 ホットコーヒーは、お世辞にも美味しいものではなかったが、それを口にして1970年代のオーディオ機器を眺めていると、何とも言えないタイムトリップ感を感じた。40年という時間がすっと巻き戻っていくような感覚であろうか・・・




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