2013/10/26

2781:OFF会 Brilon邸  

 桜の木々の枝が道路の上にせり出している。その下を車で通った。桜の花の咲く頃には淡いピンク色が空を覆い、わかやかな空気に満たされていた。その景色に目を細めたのは、そんなに前のようには思えなかった。そのピンクの花弁がはらはらと盛大に散り、道を淡く染めきっていたのを見たのも、それほど前のことには思えない。

 今は既に桜の木々の葉は色づき始めている。朝からしっかりと降っている雨によって、すっかりと色合いがオレンジ色に変わった葉から、道路に落ち始めていた。その様子がしっとりと目の中に入り込んでくる。時の経過が否応なしに体の中に吹き込まれた。

 肌寒かった。シートヒーターのボタンを押した。三段階ある温度調整は「中」にした。三つある赤いランプのうち二つが点灯した。じんわりと暖かくなってくる。

 Brilonさんのお宅には我が家から車で1時間半ほどで着く。道路はそれほど混んでいなかった。順調な流れに乗って、ほぼ一定の速度で進んだ。時の流れのように無表情な流れである。

 予定通り1時に着いた。Brilonさんの御自宅は木造の2階建て。庭は広く、隣家との距離も十分にある。広い庭の一角に車を停めた。

 車の音を聞きつけたのか、玄関からBrilonさんが出迎えてくれた。挨拶も早々に、早速リスニングルームへ・・・

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 BrilonさんのスピーカーはAUDIO PHISIC Brilon 1.0SLE。色合いは美しいバーズアイメイプル。専用のスタンドに設置されたその立ち姿は凛々しい。

 とても小さなスピーカーである。しかし、その小さなスピーカーは、得意技がある。「巴投げ」である。昨年お邪魔した時にもその技を喰らったのであるが、今回もするっと私の体の下に潜り込むと、ひょいと投げられた。私の体は空中でくるっと舞い、すとんと落ちた。

 最初にかけていただいたのはマラーの交響曲第2番の第1楽章であった。リスニングポイントはスピーカーからは6メートルほど離れている。

 Brilon1.0SLEは音とは全く関係ない「私は無関係です・・・」という表情で静かに佇んでいる。その背後には広々とした音の瀑布が広がっている。遠くから滝を眺めているような気分で音楽を聴いていた。時折水の飛沫が風に運ばれてくる。

 次にかかったのはブルックナー交響曲第7番第1楽章。ゆったりと立ち上がる微振動に滑らかなメロディーが斜めから乗っかってくる。その斜め具合が身持ち良い。

 Brilonさんシステム構成はひとひねりあるもの。CDプレーヤーはBOW TECHNOLOGIE ZZ-EIGHT。プリンアンプはQUAD QC-24。パワーアンプはQUAD U Classic。そしてスピーカーがBrilon 1.0SLEという布陣である。

 Brilon 1.0SLEはとても小さなスピーカーである。しかし、得意技がもう一つある。「踵返し」である。

 前に出ようとするところを低い姿勢から脚をとられる。体のバランスは見事に崩れる。なんだか、時間がくるっと裏返ったような気になる。

 バッハのパルティ―タ第2番が流れ始めた。遠くに奏者の指が鍵盤の上を動く様が見えるようだ。奏者との間には十分な空気がある。その空気を通して音が流れ込んでくる。

 Brilon邸の音は昨年お邪魔した時と変わっていないような気がした。苛酷なまでに急いでいるように感じられる時の流れとは別の次元に居るような錯覚に陥る。「取り残された空間」とでも言うべきであろうか・・・




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