2011/11/24

2079:ランドマークタワー  

 東京ジングフェライン第4回定期演奏会(J.S.バッハ・ヨハネ受難曲)が行われる神奈川県立音楽堂に着いたのは、1時半の開場の30分前であった。既に入り口から続く長蛇の列が形成されていた。その列に並び、今登ってきたばかりの「紅葉坂」のほうを見ると、ランドマークタワーの特徴的な姿が目に入った。とてもシンボリックな形をしたビルである。どことなく「神殿」のような雰囲気がある。
                                                                    
 開場を待つ列があまりも長くなったせいであろうか、予定よりも10分早く開場となった。私とpontaさんは「今日はリュートが加わる予定だから、少し前目の席に座りましょう」と話していた。
                                                                    
 先日同じプログラムが演奏された富士市文化会館のときと違いオーケストラにリュートが加わる。リュートは他の楽器に比べ音量が小さめ、後方の席だとその存在感が希薄になる可能性があると思ったのである。
                                                                    
 運良く、11列目の真ん中の席をキープできた。音楽堂のホールは、大きさとしては中ホールほどであろうか。席が後方へ行くにしたがって上がっていくのであるが、その角度が一般的なホールに比べ急である。建物は外装も内装も歴史を感じさせるもので、落ち着いた雰囲気。少し古めのホールであるので、前席とのスペースはミニマム。足を組むことはとてもできない。
                                               
 リュート以外の構成は富士市文化会館のときと同じである。合唱は東京ジングフェラインと富士ベートーベンコーラス。オーケストラはオルケストラ・デル・ジョルノ。古楽器を使用している。テノール、バス・バリトン、ソプラノ、カウンターテナー、バリトンのソリストが加わり、豪華な布陣である。指揮は福島章恭さん。
                                                                   
 「ヨハネ受難曲」は「ヨハネによる福音書」をテキストとして、12使徒の一人ユダの裏切りによりイエスが捕らえられ、刑に処せられ、死にいたり、埋葬されるまでを、エバンゲリオンの語りを中心にイエスやイエスを取り巻く人々、さらには群集が加わり、スリリングにそしてダイナミックに物語が進行していく。
                                                                     
 その神聖な物語はイエスの復活と栄光をたたえるコラールで締めくくられる。そのクライマックスへの流れは、時には悠然と、時には激流のように激しく、時には冬空に小さく輝く星の光のように静謐に流れる。
                                                                      
 素晴らしい演奏に浸りながら、聴衆は船に乗って川を下るように、イエス受難の物語をたどっていく。船頭役の福島さんは気迫にあふれていた。そして、その気迫に応え、すべての演奏者が感動を共にしながら演奏するさまは、この曲の持つ神聖な力を音楽堂の隅々まで浸透させていたようである。
                                                                     
 音が音楽堂のホールの緩やかにうねる天井に反射し幾たびも聴く者の耳に到達するように、「ヨハネ受難曲」に込められた聖なる美しさは目に見えないエネルギーとなって心の中に繰り返し染み込んでくる。演奏終了後の盛大な拍手は、その「証し」であるかのように音楽堂に鳴り響いた。
                                                                         
 演奏が終わり音楽堂の外に出ると、既に夜の闇が支配していた。来る時に登ってきた「紅葉坂」を下りながら、夜空を眺めると、そこには美しくライトアップされた「神殿」が目に入った。それはまさしく「神殿」に見えた。

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