2010/3/23

1470:裏通り  

 裏通りは、表通りとはその様相を異にしている。車や人の往来の賑やかな表通りに比べて、裏通りは人通りがまばらで閑散としている。

 しかし、裏通りにはどこかしら心の濃度が薄くなるようなふやけた雰囲気が漂っていて、私は好きである。特に平日の昼間などの時間帯に、こういった裏通りを少しばかり散策するのは、心の健康に良いことのような気がする。

 四谷三丁目駅で降りて賑やかな表通りから少し脇へ入ると、人々の往来は途絶え、時間が急にゆっくりと流れる。小さな飲食店が点在しているが、昼間から営業している店は少ない。

 仕事でその裏通りの奥にある美容室を訪れて書類を渡し、少しばかり話をした。このエリアの飲食店は不況の影響でどこも業績は芳しくない。そういった飲食店で働く女性が顧客であるその美容室も当然業績が思わしくない。あきらめムードであるが、なるようにしかならないといった店主のさばさばした言動が救いである。

 その店を後にして表通りに出るまで歩いて数分であるが、複雑に交差した裏通りを通り過ぎた。点在する飲食店の趣向を凝らした看板や店の名前が自然と目に入る。夜になればもっと賑やかになるのであろうが、日中は猫がゆっくりとその歩を進めるように、時間がたゆたう。

 寒さは少しづつその陣地を失い、春のほわっとした空気があたりに漂っている。少し風があるが、空気の肌触りがとてもやさしく、この路地に独特の倦怠感をもたらしているようであった。

 夜になって我が家で少しばかりレコードを聴いた。テレマンのオーボエ協奏曲である。短い四つの楽章から成っている。

 KEF104は、やや朴訥ながら誠実に音を流しだす。その音を聴きながら我が家のオーディオはまさに「裏通りオーディオ」だと思ってしまった。

 にぎやかなメインストリームではない。車の往来も人の往来もまばらで、時間がゆっくり流れる。点在する店舗は隠れ家的な良さはあるが繁盛している風ではない。何かしら取り残された時間と空間が、多少ゆがんだ非現実的な3次元を醸成している、そういう趣である。

 そんなリスニングルームで流される音楽としては、テレマンなんかはもっともふさわしいと言えるであろう。




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