このブログには、「記事カテゴリ」という分類があって、本当ならその話題の種別に従って分類をしておくと、その分野を見たい人が偶然見つけることもある、ということになるが、私の場合は、これまでに投稿した2,469件(よく書いたな)のすべてが「ノンジャンル」指定となっている。
本当は、ジャンルがない訳ではなくて、記事のすべては「オレ」というジャンルに含まれているのだが、それがどのくらいの大きさなのか、自分でも良く分からない。
さて、実は情報システムというのも、「オレ」の範疇に含まれていて、システムについても、自分はテキトーな講釈を出来る、というから、なかなか大変なものだと自惚れている。
本日自分が知ったニュースは、システム構築のチョンボで大きな話題となった「みずほ銀行」が、いよいよ全社的なシステム構築プロジェクトをはじめることになった、というものだ。またかよ、今度は大丈夫なのかよ、という声も当然だが、2015年には新システムに移行したいらしい。
このたび、その担当メーカが発表されたのだが、それは富士通、日本IBM、NTT-Data、日立というオールスターだ。日本で金融システムをつくる、と言えば、当然この4社が有力候補になるが、まさか発注先は全社、になるとは思わなかった。4番を打てるバッターを4人並べるのだからさぞかし強力なシステムが出来るだろう、と真剣に考えるのは、日本では読売巨人軍とみずほFGくらいだと思うが、それはもちろん、大変ユニークで独創的な考え方であるから、私としては、自分の預金口座が消えました、ということにならないのなら、全然文句はない。逆に、新システムに移行したら、何故か自分の預金が二倍になっていた、というような景気の良いサプライズを期待している。
その内訳を見ると、いわゆる基幹業務である勘定系については、ハードが日本IBMで、システムが富士通、NTT-Dataは他行との繋ぎである全銀システム、そして日立が融資、外為などだ。それぞれが得意なパートをやることにする、と言うのだから、ベスト・ナインに選ばれた選手でひとつのチームをつくる、という考え方だろう。しかし、実際には、それでチーム編成をして試合をする、というような機会は今までなかったのだから、本当に強いチームが出来るのか、は誰にも分からない。
みずほにとっては、こうした企業は、業者であるとともに、自行の顧客でもある、という関係だから、営業上の理由によって、入札をしてベストな一社に決める、という単純なデシジョンが出来なかったのか、それとも、本当に最強な業者を最適に組み合わせようとしたらこうなった、ということなのか、自分には分からない。
それと、もっと良く分からないのは、これが分割発注である、という説明で、そうすると、各社は自分に与えられた仕様書の通りに仕事をするだけで良い、ということになり、「あっち側はどうなっているのだろう?」と素朴な疑問を持った作業者がいても、あっちの仕様書なんかどうせもらえないし、分からないことは適当に(自分にとって都合良く)解釈し、その旨を小さな文字で書いておこう、というようなことになりはしないのだろうか?てか、絶対そうだろうな、と思う。
そういう繋ぎの部分は、顧客であるみずほのシステム・エンジニアが超人的な能力によって、すべて解決する、というのが、自分の予想だが、そんなこと、一体可能なのだろうか。
みずほは、10年前の合併時にも、昨年の大震災直後にも、重大なシステム障害を経験している。そうした経験の上に、かくも複雑な分割発注、全体まとめは自己責任、というような道を選択したその勇気には、本当に驚く。10年前にも、銀行経営者は、本当にシステム開発がどういうものなのか分かっているのか、という重大な疑惑が生まれたのだが、それに対する満足出来る回答はいまだにない。反省もなく、似たような無責任体制(トラブルが起これば、まず誰のせいだ、という泥仕合になる仕組み)を構築したのだとすれば、当時も言われたのとまったく同じ、ガバナンスの欠陥ということが再度指摘されるのではないか、と思う。
大企業の経営者たちは、それぞれ出身部門の利権闘争をその主要任務とする、という中国共産党指導者たちと良く似た仕事をしている、ということについては、この10年間で何の変化もない。従って、権力のせめぎ合い、妥協の産物として、あらゆる経営判断が行われる、という事実は変わっていないと思う。
ちなみに、発表された記事内容では、勘定系のハードは日本IBM製のメインフレームだが、その他は、富士通製および日立製のLINUXおよびAIXのサーバによって運用されることになっている。メーカが自社製品を囲い込むためにつくったメーカOSに対抗し、誰でも自由に使える、という民主化運動みたいなかたちで始まったUNIXというOSが、それぞれに純化して出来たLINUXとAIXが、銀行業務を堂々と担うようになった、という点については、それなりに感慨深いものがある。経営者のアタマの中身はどうだか分からないが、草の根レベルの技術における民主化は、確実に進んでいるのだと思う。

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