毎日新聞
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自由の女神 観光地に出現、景観論争に 函館
6月20日11時8分配信 毎日新聞
洋館などの歴史的建造物が並ぶ北海道函館市元町の中心部に出現した「自由の女神」像が、景観論争を巻き起こしている。一帯は市都市景観形成地域に指定されており、住民らは撤去を要求。市は是正に向けた指導をする構えで、建てた業者も従う意向だが「教会や寺院がよくて、なぜ自由の女神はいけないのか」と不満も漏らす。
女神像は高さ約6メートルの強化プラスチック製。今月5日、市内でカニなどを販売する「マルキタ北村水産」(北村暢一社長)が店の前に設置した。店舗2階にあるカラオケや将棋などができるフリースペースの「モニュメント」だという。近くには函館山ロープウェイ、ハリストス正教会、カトリック元町教会などの観光名所がある。一帯で工作物を建てるには市条例に基づく届け出が必要で「周囲の景観と調和がとれたもの」とされている。
設置後、市には地元町会などから6件の撤去や是正を求める要望書が提出された。北村社長は「設置届も提出し手続きに問題はない」と反発するが、話を聞いたうえで、是正に応じる姿勢も示している。
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その昔、たしか高田馬場あたりのパチンコ屋の屋上にキングコングのはりぼてがあったようなのを思い出したが、店の前に「自由の女神」像を置いて、客寄せです、というのは、はっきり言って、やめた方が良い。
「自由の女神」も単なる有名な意匠に過ぎないではないか、というのが、設置者の意見らしいが、そのシンボルには、歴史的、政治的な意味がこびりついているのであって、それをカラオケや将棋のできる店のシンボルにする、というのでは、品が悪いことこの上ない。
自由の女神は、アメリカ独立百周年を記念して、フランス共和政府が友情の証として寄贈したものであり、その台座はニューヨークのフリーメーソンが製作している。そして、ここに表現されているものは、フランス革命およびアメリカ独立革命の精神そのものである。その命名が「自由」(Liberty)を標榜するのは、何よりもその目的をはっきり示している。
もし、設置者が、函館を「自由」や「革命」の起点にしたいと考え、たとえば、北海道独立のために、日本政府に対する叛乱を企図しているのであれば、「自由の女神」はそのシンボリックな意味を十分に発揮するものと言えよう。あるいは、ここが、ニューヨーク文化の情報発信基地として、いかにもニューヨークらしい象徴を必要とした、というのなら、それもまた理解できる。
しかし、単に目立つから、という理由で、歴史的に重い意味を背負って来たモニュメントを安易にディスプレイする、というのは、そのシンボルに深い思いを寄せて来た人々に対する侮辱であり、歴史に対する無知の表明でしかない。
「マルキタ北村水産」彼らがフリーメーソンであって、何らかの影響力を函館で行使したいと思っているのでなかったら、こんな物騒なものは、撤去するのが身のためである。

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