読売新聞
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ベトナム新幹線計画否決、日本の輸出戦略に打撃
6月19日19時22分配信 読売新聞
【シンガポール=実森出】日本の新幹線方式を採用することが決まっているベトナムの首都ハノイとホーチミン間の約1600キロ・メートルを結ぶ「南北高速鉄道」の建設計画で、ベトナム国会は19日、同計画を承認する案を否決し、継続審議とした。
ベトナム政府は今国会での正式承認を目指していたが、計画の修正は必至だ。アジア向けのインフラ(社会基盤)輸出を成長戦略の柱と位置付ける日本にとっても打撃となりそうだ。
審議では国家予算の約3倍に相当する約560億ドル(約5兆2000億円)の巨額の建設費に対する慎重論が多く出され、否決の要因となった。次回の審議は今年末に行われる予定だが、計画の実現に向け不透明感が強まった格好だ。 最終更新:6月19日19時22分
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事実関係は、別に日常的なことだが、それを「打撃」と書く新聞記者のセンスは、どうにかならないものか。こうしたインフラ案件の「お話」というものは、世の中にいくらでもあって、そういう「お話」に基いて、まるで注文がもらえたように喜んでしまうことを「取らぬ狸の皮算用」と呼ぶことは、昔から知られている。
営業の世界では、正式注文書をもらうその瞬間までは、お客さんからどんなに耳ざわりの良いお話を聞いても、うっかり信じないのが、当然のマナーである。ベトナムの現在のインフラ状況で、一体新幹線が必要なのだろうか、と素直に考えれば、それはちょっと飛躍があり過ぎないか、というのは常識で十分に分かるところだ。そんなことより、まず自転車とか三輪トラックなどで、隣町とかそれより遠いところまで安全に移動できることの方がずっと大切だから、カネの使い道として、まず幹線道路の舗装をきちんとすることが優先される、というのが、順当な考え方だろう。
それでも、ハノイとホーチミンの間をより快適かつ迅速に移動できることは、たとえば、この間をしばしば往復する必要のある政府高官などにとっては魅力的なことだろう。しかし、そんなカネがあるなら、町に下水道を引いて、伝染病を減らすことの方がよほど大切だ。
「お話」はあくまでも「お話」でしかなく、しっかりした営業なら、もっと大きなフレームの中で、その妥当性を検証しておかねばならない。根拠もなくいい加減な期待をしておいて、実現しなければがっかりする、というのは、過分な期待をして、結果に対して文句を言う、アホなW杯サポータのようなもので、読売新聞の記者もその程度か、と思わせる見出しの付け方ではある。

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