「ヴァン・ヘイレン 「ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース」」
レコード・CDレビュー
自分はその当時、ヴァン・ヘイレンが嫌いだった。
それまで自分は英国ロックどっぷりだったので、初めて聴いた時、妙にカラッとした音に馴染めなかった。またギタリストがやたらニコニコしているのも気に入らなかった。とはいうものの、そのギターはそれまで聞いたことのない音でぶっ飛んだ。そしてその音色もそれまでに聴いたどんなギターよりも歪んでいたのだ。あの当時、どう逆立ちしてもあそこまで歪ませると、ハウリングの嵐で弾けたものではなかった。当時はピックアップをみずからパラフィン浸けしていることなど知らなかったし、見たこともないストラトタイプの(フランケンシュタイン)ギターも衝撃的だった。
さて、高校時代にバンドでコピーすることになったのを機に、改めて聴き直したらタッピングやらアーミングやら派手なプレイ以外に、地味だが凝った部分が多いことに気付いた。例えばLight Up The Skyのバッキングで8分単音を刻みながらトップのコードの長さを色々変えるところなどである。またリズムもいつも安定していて、歌の合間にトリッキーなオブリガートを入れても自然にバッキングに戻ってくる。当時は「ギター・オーケストレーション」という言葉が流行ったくらい、ギタリストが一人のバンドでも何重にもオーバーダブするのが当たり前だったが、彼はほとんどそれをすることもなかった。さらにファーストでは、ボーカルと同じくらいギターが大きくミックスされていたのも驚きだった。
という風に実際弾いてみて良さが分かったのだが、それでも自ら好きだと言うことはなかった。レコードも決して買わなかった。しかしアルバムが出るごとに友人から借りるか「ビート・オン・プラザ」でカセットに録音しては密かにチェックしていたのだ。
好きでもそうだと言えない微妙な自分だったが、ボーカルがサミー・ヘイガーに替わってからは全く興味が持てなくなった。デイヴ・リー・ロスの声も魅力の一つだったからだ。
さて、そのデイヴ・リー・ロスが復帰して数年前にツアーを行ったが、一時的なものに終わるだろうと思っていたところに、何と新作がリリースされた。デビュー当時のようにほとんどオーバーダブもなく、ギター一本のみである。そしてデビュー当時のように豪快で疾走感溢れるサウンドはただただ気持ちいい。センスの悪いジャケットも相変わらずである。そう、やっぱりヴァン・ヘイレンはこうでなければならない。


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