自分には食べ物の好き嫌いがないのは自慢できることのひとつだった。子供時分はニンジン、牛乳、ピーマンが嫌いだったが、小中学時代に克服、そして25歳で「最後の砦」だったセロリも征服し、これで一般的な食材・料理の好き嫌いはなくなったと思っていた。
しかし、世界には色々な「恐るべき」食べ物・飲み物がある。もちろんひと目でゲテモノと分かるようなものなら初めから気をつけるのだが、普通に見えて実は手ごわいものが恐ろしい。
アルゼンチン、スペインでのデザートの一つに「アロス・コン・レチェ」というのがある。ある時これが出たのだが、実はこれは甘いミルク粥なのだ。直訳すれば「牛乳と米」となるが、それらを砂糖で煮込み、冷たく冷やしたものなのだ。日本の主食である白米が甘いということ自体、衝撃だった。幸い量が少なかったので何とか残さずに済んだが、「決してレストランでオーダーしないリスト」に入れた。
ところで、アルゼンチンのアサド・パーティーは現地滞在中で最大の楽しみの一つである。それは彼の国で週末によく開催されるバーベキューのことで、庭などに設置されたかまどで牛肉・ソーセージ、ホルモンなどを炭火で焼く。アルゼンチンといえば人口より牛のほうが多いことで有名であり、また牛は自然の草を食べて育ち、人工飼料などは使わないらしいので肉の質が非常に高い。それを炎ではなく、赤くなった炭で時間をかけてゆっくり焼くのだ。オプションでコショウを使うこともあるが、味付けは塩を振るのみ。大抵は一家の主が「鍋奉行」ならぬ「アサド奉行」として肉を焼き、参加者に切り分ける。そしてメンドーサ産の極上のワインで舌鼓を打つ。至福のひと時である。
食後にはデザートの後、コーヒーか食後酒が出るのだが、欲張りな自分は当然両方頂く。しかしこの食後酒が大抵曲者なのだ。ウオツカやテキーラのようにストレートな酒なら良いが、得体の知れないボトルが出てくることがよくある。イタリアで有名なリモンチェッロならOKだが、妙な味のきつい酒が出てきたときは参ってしまった。酔っ払ってしまったのならまだいいが、あまりの不味さに飲めなかったのだ。風邪薬のように少し甘く苦い、そして黒っぽかったものだが、残念ながら名前を忘れたので「リスト」には入れることができなかった。
しかし、不味いものの横綱といえば、今のところ「ルートビア」である。米国の友人宅にお邪魔したときに勧められたもので、「ビア」といってもアルコールは含んでいない。コーラかドクター・ペッパーみたいなものだろうと思い、グビッとやって思わず噴き出しそうになった。それはやはり、液体風邪薬のように甘くて苦く、なにやらスパイスの風味もする奇妙奇天烈な「清涼飲料水」だったのだ。先ほどの食後酒なら、小さいグラスに注がれていたので一気に飲み干せば済んだが、これは350cc位のボトルを開けられたので往生した。
調べてみると、東南アジアにも存在するらしいので、これは要注意である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%93%E3%82%A2

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