教養や学問があったわけではなく、私の川柳は好きなだけが取柄の実戦主義であった。句会、大会の戦場を駆け回り、叩き上げの、経験だけを頼りにバカほどの年数を重ねて来たに過ぎない。だが川柳の現状はみなそうであった。指導者と言われる人たちも、経験だけを頼りになんの根拠もない「多読多作」をスローガンとして指導者のつもりになっていたに過ぎないのである。
だが、川柳にもようやく、ある教養に裏打ちされた論理的な思考のもとに川柳を書く層が増えてきた。彼らの情に流されない思考は一見クールだが、客観的に川柳を分析し、新しい川柳の扉をひらくパワーを秘めているものも少なくない。勿論、まだ彼らに川柳を任せるつもりはないが、常に彼らの川柳を読み、その論に耳を傾ける用意だけはしておきたい。少なくとも経験にものを言わせて異質なものは排除するという、過去の事例を繰り返さないようにと、叩き上げの軍曹あがりはほろ苦く自分の足元を見つめているのである。
明日は早い出発で東京に行く。なぜ早いかは、用件を済ませて日帰りをする予算しかないという。ケチな団体・・勿論、川柳ではない。

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