蒙古斑に気づく還暦三年目 浪越靖政
蒙古斑とは赤ちゃんのお尻にできる青い痣のことで、成長と同時に消えるものと思っていたが、還暦過ぎまでそれに気づかなかったというから愉快である。勿論
、「蒙古斑」を喩と受け取れば、原風景として作者の内にある幼児体験とか、さまざまな思いや出来ごとの凝縮ということになるのだが、深読みはあえて避けて、還暦過ぎまで蒙古斑に気づかなかった呑気なオジさんのおおらかさを私は愉しんだ。
葉桜の一年分より重い日々 〃
パッと咲いていさぎよく散るのが桜の美の極致なら、目立たず騒がず、じっと耐えてその後の責任を取るのが「葉桜」であろう。その葉桜の「一年分より重い日々」とは、なんとも痛ましい生きることの辛さであろうか。しかしそれでも、さやさやと葉ずれの音を聞きながら、風を愉しみ、眩しい光りと戯れる日もあって、人生は救われるのだ。

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