「川端康成の世界」
岡山の朗読塾15周年記念ということで、今日明日と2日間の公演はかなり人気が高いらしく、6時開演の時には300人収容の小ホールの8割方は埋まっていたようだ。最近朗読に興味があって、ときには飛び入りで参加したりもするが、さすがにセミプロ集団は違う。
第1部は『掌の小説』より。「骨拾い」「雨傘」「時雨の駅」「笑わぬ男」「黒牡丹」の、それぞれの登場人物に合わせて2〜4人が朗読する。シンプルなセットだけのステージは、マイクと白色の照明と、かすかにが流れるBGMだけ。その観客は咳ひとつしない静寂の中で、約1時間、喜びも悲しみも笑いも、抑制された朗読の声だけが浮かびあがる。緊張感とも少し違う、川端文学のことばの海をただよう静けさ。
第2部は『伊豆の踊子』。作務衣を現代風にアレンジした衣装の登場人物が10人ほど。それにストーリーを朗読する2人。描写と文体ののうつくしさの、感情過多にならない表現で
、『旅芸人たちに追いつきたいのに茶屋の婆さんが見送りについてきてしまってなかなか早く歩を進めることができない』場面のもどかしさ。
』『夜、座敷に呼ばれている踊子の太鼓の音が止むと、たまらなくなって「雨の音の底に私は沈み込んでしまった」』という心情や心理のあやも、小説を読むように、あるいはそれ以上にドラマチックに聞かせてくれ、朗読の素晴らしさを再認識した。

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