オールド・ブラックジョーは与党になりはてた
予定的な句を作らないこと。あえて形式の秩序をはみ出していく勇気も必要という、つまりは何でもありの実験を試みる句会に提出された1句だが、ん?、と首をひねった。
「オールド・ブラックジョー」とは耳になじんでいるォスターの名曲で、アメリカにまだ奴隷制度が存在していた時代の、黒人の老僕ジョーを歌ったものとされているが、その哀切を帯びたメロディは日本でもよく知られている。だが、曲のタイトルとして、あるいは個人の名前であってもいいが、「与党になりはてた」とは何か。
黒人の歌からオバマ大統領を連想したのだろうか。そして、かつて迫害され虐げられたあげくの、反体制的な歴史を持つ黒人魂のようなものの、体制側の頂点に立つオバマへの痛烈な批判だと、強引な解釈ができなくはない。
だがこのような強引な読みをされてしまうところに、この句の難点がある。具体的に言えば、一見、突拍子もない飛躍を遂げているように見えるが、実は意表をつく意図が透けてみえてしまい、何よりも秩序をはみ出したつもりが、秩序にからみ取られてしまったということであろう。
おしりの羽から鶉になりすます
これも解りにくい句だが、何食わぬ顔で周囲に明るさを振りまきながら、おしりのへんから変身が始まっている。それも鶉という小さな鳥になってゆく、その「なりすます」の悪意がこの句を支えている。
・・と、まあ作るほうも勝手だが、読み手も勝手気ままに珍解釈をぶつけあう・・それもよかろう。

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