樋口由紀子はわがままだ。妥協しない。
大会、句会の選をする私の場合、いいことかどうかは別にして、ある程度バランスを考える。選者としての私の許容範囲は広い。
私だけでなく、くんじろうも久良も、祥文も、意識しているかどうかは別にして、ある程度バランスを考えながら「選」という作品を作り上げているように見える。
だが由紀子は直線的な選をする。それが純粋なのか不器用なのかは投句者の判断に任すしかないが、入選句が由紀子選という作品として屹立しているのは確か。
選とは選んだ句もさることながら、選ばなかった投句者をどう納得させるかが決め手になる。由紀子のはっきりとした選句姿勢は、多分没の投句者を納得させているだろう。
課題「増える」
水が水を生むから水が増えるのだ 久良
親類も来るし隣の猫も来る くんじろう
次々とタレントを出す皿小鉢 祥文
楽器庫のピッコロだけが増えている 正博
今朝もまたボタンの穴が増えている かがり
ねずみ算式にゆで卵をゆでる 一筒
ぴかぴかにぴかっと宅地分譲中 由紀子
うすっぺらな「パーセント」だが、飽きない「パーセント」はおもしろい。

0