孤高の楽しみ

2017/1/9 | 投稿者: 鹿苑院

「ぬるい!淹れ直せ!」と湯呑を投げつけるというのはオレは漫画でしか見たことがない。ステレオタイプ過ぎてもはや陳腐になっているから今はドラマなどでもこんなシーンはほとんど出てこないのだが、かつての男尊女卑時代にはこういう人もいたのだろうか。まあいたと仮定して話を進めるが、どうにも妙な話である。日本茶はぬるい方が美味いのに。

いわゆるフツーの緑茶(煎茶)はぬるいお湯で淹れた時に旨みを発揮するようにできている。熱すぎると苦くなったり渋くなったりするから、ちゃんと心得ている人は沸騰したお湯がぬるくなるのを待ってから急須に注ぐ。だから、「ぬるい!淹れ直せ!」と言いたくなるようなお茶はおそらくちゃんと淹れられたお茶に違いない。

「ぬるい!淹れ直せ!」が意味するものとは何なのだろう? もしかしたら知識の無さゆえにちゃんとしたものを拒絶する愚かさ(前稿のそば屋の客と同じ)を揶揄するための演出的表現なのかもしれないが考え過ぎだろう。ドラマにこのシーンが出てくるとしたら脚本家も日本茶の正しい淹れ方を知らない可能性の方が高そうだ。
あと大穴の可能性としては、湯呑の中身が煎茶ではなくほうじ茶や番茶だったら確かに熱湯の方が美味いのでぬるいと文句を言うのは理にかなっている。

こういう事情で、オレは来客に(オレのための来客などほとんど無いが)自分の買い集めた茶を淹れて出すことはあまりしない。せっかくちゃんと淹れたのにぬるさゆえに良く思ってもらえなかったら癪に触るからで、コーヒーでも出す方がよほどお互いの精神のために良い。ぬるくて旨い茶はあくまで孤高の楽しみである。
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