英雄の嘆

2011/9/21 | 投稿者: 鹿苑院

せっかく抽選を当ててチケットを手に入れたイベントを、地方暮らしの悲しさで明日の仕事の都合と台風の影響のためにどうしても時間制限ができ、途中退出せざるを得なかった。今まことに悔しい気持ちでこれを書いている。しかしモギリの外ではおそらく抽選に外れたのであろうファンが洩れる音だけ聴いていた。こいつらに比べりゃオレなんてまだ幸せだよなと思えば少し気が楽になった。

これに似た、しかももっと切実な悔しさを歴史上の英雄も味わっていたと言ったら驚くだろうか。武田信玄、上杉謙信の両雄である。「ええっ、信玄や謙信も黒ネコ同盟に入っていたの!?」というのは愚かな質問なので却下する(当たり前だ)。

戦国トップレベルの強兵を擁しながらこの両雄が天下を取れなかった理由、それは京の都から遠い本拠地を長く空けていられなかったということにある。どんなに戦局を有利に展開させたとしても徹底的に織田信長を叩いて上洛するのは物理的に無理な話で、農繁期になればどうしても甲斐や越後に帰らざるを得なかったのだ。織田信長が天下取りに最も近付けたのはこの逆の条件が揃っていたからだ。信長の領国は京に近く、しかも織田軍は傭兵制なので土地にも縛られない。時間制限なく戦い続ければ上洛できたであろう信玄や謙信が、その都合で兵を退かねばならぬ時、今日のオレなどとは比べ物にならぬほど口惜しかっただろう。

こういう時、歴史主義者で良かったと思う。楽しみにしていたイベントを途中退出するという普通は不快でしかない出来事さえ、自分を英雄に重ね合わせてここまで興深く随想することができるのだから。これだから歴史主義者はやめられない。
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