2019/6/16 | 投稿者: 鹿苑院

それまで特に悪いものだと思われていなかったものが、巨大メディアによってネガティブイメージを持って喧伝されると急に世の中の人みんながそれを悪いものだとしか思えなくなるという現象が時にある。

昨日、「世界ふしぎ発見」を見ていたらウズベキスタンの青年が「お母さんが大事、お母さんを幸せにしてあげたい」と言っていた。自分を産み育ててくれた母親を大事に思い、慕うのは人間として当たり前の気持ちだが、こういう事を日本で公言するとたちまちマザコンという言葉を浴びせられることになる。おそらくこの言葉が世に出て否定的なイメージで捉えられるようになったのは佐野史郎演じる冬彦さんからであろう。
ちなみにマザコンを否定的に捉える国は日本くらいのものである。

ヘルマン・ヘッセが「老人特有の甘い香り」と懐かしみを込めて書いた匂いは、資生堂がデオドラント商品を売るために「加齢臭」と名付けて排除すべきものであるかのように喧伝すると、たちまち嫌われる悪臭ということになった。
おじいちゃんおばあちゃんの家を訪れると匂ったあのニオイにホッとしていたという人は実は相当数いたろうに、加齢臭なる言葉が付いてそう言われるとそのニオイを好もしく思う自分はおかしいのではないかという強迫観念に捉われて不快に感じなきゃいけないように思い込み、そうなると本当にそう感じるようになるものだ。

やはり本質的な部分で日本はムラ社会のままでありイジメが好きな国民性だから、次々に新しい言葉を作ってそれに当てはまる人を攻撃するのをいつの時代もやめられないのだ。
今はマザコンや加齢臭を馬鹿にしている人もいつ自分のどういう属性が差別の対象になるかわからない。ご用心ご用心…いや、巨大メディアの前には個人がいかに用心しても抗うことはできまい。ある日突然襲いかかって避けられない天災のようなものである。
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2019/6/13 | 投稿者: 鹿苑院

銀行印を注文し終えたので、記念に世界一有名な印について書く。伝国の玉璽である。中国においてこれを持つ者こそが皇帝という、日本でいえば三種の神器のようなものだ。

ただ、三種の神器よりはゆるい扱いかもしれない。だって玉璽を持っていなくても皇帝を名乗った人はたくさんいるから。
日本でも南北朝の頃に北朝は三種の神器を持っていなくても天皇を名乗ったが、少なくとも手に入れようという努力はしていたし、その過程で偽物を掴まされたりもした。
中国の皇帝たちは特に玉璽を手に入れるのに血眼になった雰囲気はなく、「玉璽を持っていないからあの人は偽帝」という判断基準で語る文章を見たこともない。逆に袁術などは玉璽を手にして皇帝を名乗ったのに同時代人からも後世の人からもさんざん偽帝呼ばわりされて擁護らしい擁護がまったくない。水戸学で「三種の神器を持っていなかったから北朝は正統じゃない」と言い切ったのに比べるとえらい違いである。

伝国の玉璽は始皇帝が天下を統一した時に宝玉で作り、秦滅亡後も漢に受け継がれた。前漢が新に簒奪される時、玉璽をよこせとやってきた王莽の使者に王政君が怒りを露わにして投げつけたために一部欠けてしまい、これを金で修繕した。この修繕が本物の証とされるが五代十国時代に紛失されており、今でも行方はわからない。もっとも勝手にレプリカを作って代用品にした王朝はいくつかあるが。
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2019/6/10 | 投稿者: 鹿苑院

昨日が結婚式だった。結婚式の詳細は書かないが、がっちりとした和装に身を固めたのは記憶にある限り初めてだが予想以上に動きにくいもので、なるほど鳥羽伏見の戦いに幕軍が勝てなかったわけだと妙なことを思った。

…とりあえずそれだけを書く(笑)
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2019/6/6 | 投稿者: 鹿苑院

…という計画を今遂行中。実店舗2件に問い合わせてみたがどちらも高いのでネットで探す。同じようなものでどうして倍も値段が違うのか不思議だが、こうやって個人経営の中小店舗はインターネット店に客を奪われていくんだなあ…とヘボ経済学者気取りで慨嘆してみる。

象牙の実印はすでに持っているが、新しく作る銀行印は象牙にこだわろうとは思わない。やはりネットとはいえ高価だし、その値段に釣り合うほどは象牙に興味が無い。

最初は柘植にしようかと思った。家康公の入れ歯は柘植でできていたというから、歯科医の僕の財産を管理する印にはふさわしいと思ったのだが、木製は耐久性に難があるのでおすすめしないと言われたのでとりあえず却下。

木製以外でメジャーなのは牛の角とチタンだが、チタンは象牙並みとはいかなくともそれに次ぐぐらい高いのでこれも却下(硬いので彫るのが難しいらしい)。
牛の角なら黒水牛とオランダ水牛があり、両者の物理的特性はほぼ同じ。見た目が違うだけなので好みで選べばいいそうだから、オランダ水牛で検討してみたい。ただしオランダ水牛の方が黒水牛よりわずかに高いようだが。

オランダ水牛は白い中に茶色〜黒色の縞が入るのが一般的だが、上級品はそれがなく真っ白である。ランクが下がるほど縞が多くなっていくが、これも見た目の好みから言って僕はほどほどに木目のような縞があるのが欲しい。完璧なものよりも少し落ちるものを好むのは茶道哲学をかじった影響である。
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2019/6/4 | 投稿者: 鹿苑院

安芸国五龍城は宍戸氏の居城である。隣の毛利氏とは累代の抗争相手であったが、毛利に元就が出ると宍戸元源はこれと和睦した。昔読んだ本では元就が単身ふらりと五龍城に出掛けて茶飲み話のようにあっさりと和睦してきたように書かれていたが史実かどうかは知らない。
ともかくも元源の嫡孫・隆家と元就の娘が結婚することになった。元就の子女を迎えるなど家を乗っ取られるフラグのようなものだが、宍戸氏に関しては幸いなことにそういうことはなく、隆家と元就の娘の結婚生活はまあ円満だったと言えるだろう。幕末まで宍戸氏は長州藩の重臣として健在である。一時、高杉晋作が宍戸刑馬なる偽名を名乗って活動していたことがあるがむろん本来の宍戸氏とは関係がない。毛利家中のゆゆしい名前を拝借したに過ぎないだろう。

愛用のキヨーレオピンの製造元の住所を見ただけで行ったこともないのに「ああ、五龍城の近くか」とわかり、ここまでの随想をすることができる歴史者としての自分の体質を面白く思う。
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2019/5/29 | 投稿者: 鹿苑院

妻と何か一緒に遊べるものがあるといいと思って、スタート将棋というのを買ってみた。ビギナー向けに将棋を簡単に覚えられるセットで、駒に矢印がついていて動きを覚えていなくても対局できるようになっている。これが意外とヒットで、僕もそんなにレベルが高くないからへっぽこ同士で白熱した試合になるのが楽しい。

「そんなにレベルが高くない」どころか僕などは駒の動かし方を知っている程度で、すべて我流で闇雲にやっているだけだから棒銀だの穴熊だのは聞いたことはあるが何のことか知らないという有様なのだが、やっと一つだけ覚える気になったのが美濃囲いである。

美濃囲いとは岐阜城の鉄壁の守りにちなんで織田信長が命名したという説があるが、どうやら俗説に過ぎずあまり信用している人はいないようだ。実際のありようは江戸時代の美濃出身の棋士が得意にしていたからというさほど面白くない話である。
ただ、やはり何か一つ戦法を覚えようと思った時に美濃囲いを選ぶ気になったのはやはり郷愁というものに違いない。今住んでいる所も美濃(岐阜県)ではあるが、同じ県とはいえさほど馴染みのないエリアなので、金華山と岐阜城が恋しくて仕方がない気持ちなのだ。
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2019/5/17 | 投稿者: 鹿苑院

司馬遼太郎の「国盗り物語」を読み始めた。この小説の面白さは知っていたが今までなかなか読み始めるには至らなかった。
そのわけは、家にあるのは文庫本ではないからただでさえ持ち運びに適していないうえに、祖父の遺品でもあるので汚損を恐れると尚更外出のお供にはしづらいからだ。

この5月12日から新居に引っ越した。この数年それに明け暮れていたように、休日ごとにお見合いやそれに続くデート(という名の布施行)のために電車に乗って名古屋に通う必要がなくなったので、家に座ってじっくり本を読めるようになった。そのためやっと「国盗り物語」を読めるというわけである。
もっとも今のところ新生活が始まって以来、連休の振替出勤のため休日が一日も与えられておらず、家にいても家事の分担などでせわしない。期待したほどゆっくりと本が読める環境ではないのだが、新生活に慣れてペースを掴んでくれば時間のやりくりも上手くなるだろう。
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2019/5/6 | 投稿者: 鹿苑院

なんとなくここの所の精神疲れを癒したくて、雄大な景色を見たくなった。思い浮かんだのが松本城だった。はるばる訪れてみると、天気にも恵まれ、期待通りの光景を見せてくれた。

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歩いてみて、松本城の良さは周りに高層建築がないことかもしれないと思った。例えば大阪城などはすぐ近くにそれよりも高いビルがあって興醒めするが、松本城の周囲にはそんなものはない。抜けるような青空と日本アルプスだけを背景とする爽やかさである。

ライトアップに惹かれて夜にも訪れてみたら、昼とはまた違った顔を拝むことができた。

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夜になると水に映る姿がくっきりとして写真映えする。
また、松本城といえば烏城と別名されるようにとにかく漆黒の城と言われがちで、なるほど昼間ならそう見えるのだが、夜になるとあながちそうでもないという印象になる。むしろ白と黒のツートーンと言うべきである。

あちこちの城ランキングで松本城が必ず上位に来るわけがわかった。なるほど国宝の名に恥じぬ。
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2019/5/1 | 投稿者: 鹿苑院

スペイン人が南米に侵攻した時、銀を大量に略奪して本国に持ち帰った。アメリカ大陸は銀の宝庫であり、とりわけメキシコ銀は中国にも流入して明・清の財政の基礎ともなるほど世界中を席巻した。
それまでは金と銀はほぼ同じ価値であり、時には銀の方が高い値がつく事もあったが、アメリカ大陸の発見による銀の大量産出により希少価値が下がり、金との間に決定的な価値の差がついた。今日ではシルバーアクセサリーは中高生の小遣いでも買える。石見銀山を巡って死闘を演じた毛利元就や尼子晴久が聞いたらどんな顔をするか知れない。

中には色の似た金属を銀と間違えて持ち帰ったスペイン人もいたが、融点が違うのですぐに間違いに気付き、その金属は用無しとして廃棄された。人類とプラチナの出逢いはかくのごとく幸福なものではなかった。

今日、結婚指輪を買ってきた。妻はずっとゴールドがいいと言っていたのだが、実際に現物を見て店員の話を聞くとプラチナに宗旨替えをしてしまい、結局は大多数の日本人がそうであるようにプラチナの指輪を買う事になった。
プラチナが金や銀より価値が高い貴金属だという事は理解しているのだが、歴史ファンとしては金や銀なら甲州や佐渡や石見の金山銀山、金閣寺や東照宮などのきらびやかな装飾に想いを馳せてその随想だけでご飯三杯はいけるが、プラチナという片仮名めいた名前の金属ではどうもそういう随想につながりにくい。
幸福な馴れ初めではなかった人類とプラチナが今は蜜月であるように、僕も今は何の感慨もないこの指輪に素晴らしい思い出を刻んでいければいい。

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2019/4/30 | 投稿者: 鹿苑院

NHKの中継で見た。202年ぶりの儀式にしては意外に簡素だと感じたが、ド派手にやるよりはこのくらいの慎ましやかな方が、不況にあえぐ国民に寄り添ってこられた陛下にふさわしいようにも思う。
それにしても、京都でなく東京で、衣冠束帯でなくモーニングで退位された事に時代の流れを感じた。

余談だが家からさほど遠くない所に「平成」という名の道の駅がある。せっかくだから今日行ってみようと思ったのだが、あまりにひどい渋滞だったため引き返してきた。
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