「ご隠居、あけましておめでとうございます。」
「熊さんも、おめでとう。」
「いやぁ、新年早々から展覧会巡りだなんて、ご隠居、今年もかなり見てまわろうって意気込んでますね?」
「そんなことはないさ。 でも、きょうは、三井で円山派、江戸琳派をいくつも見られたし、さっき見た特別展でも平安の名筆や酒井抱一の屏風絵が見られた、というわけで、きょう見たところだけでも、共通するところがあるだろ? まあ、そんな展覧会が巡り合えば、廻って見ようというつもりだがな。」
本文中、作品名にリンクが設定してあるものは、クリックすると東京国立博物館の館蔵品詳細ページ、または、文化遺産オンラインの詳細ページで画像を見ることができます。
「まずは、『子年に長寿を祝う』という特集(〜1/27)ですか。 こちらの鼠草紙(ねずみのそうし)絵巻は、サントリーの鳥獣戯画展でも見ましたが、あん時は、人が多くてじっくり見てられませんでしたね。 え〜と、なになに...」
京都四条堀川に住む鼠の権頭(ごんのかみ)が、人間の女性と結婚し、子孫を畜生道(ちくしょうどう)から救おうとする物語です。権頭は清水寺に詣で美しい姫君と出会い結婚しますが正体がばれ、姫は家を出て都の人と再婚してしまい、失望した権頭は出家して高野山で仏道に励みます。 (作品解説より引用)
「え〜、泣けてくるじゃありませんか。 人をだますのはよくないけど、子孫のためを思って人間と結婚したいと、清水寺に願掛けに行ったんでしょ。 姫君もわかってあげなきゃ、ねえ。」
「熊さん、何を一人でぶつぶつ言ってるんだい。」
「ご隠居、この鈴木春信のは、鼠じゃなくてでぶ猫じゃ?」
「よくご覧よ、猫が見ている先に、子どもが懐に鼠を持っているじゃないか。」
「こちらの、龍・虎・梅・竹の四文字は、後陽成天皇の書だそうだ。 龍虎は、英雄・天子を象徴し、梅竹は、吉祥を表すということじゃな。」
「あれっ、ご隠居、後陽成天皇っていう名前は、さっきの特別展にもあったんじゃ? おっと3点もあったじゃないか。」
「こっちの<百鳥図>(絹本着色・明時代)てのは、何か見たことあると思ったら、若冲作かもしれないという<鳥獣花木図屏風>の左隻を思い出しましたよ。
鼠に大根だなんて、江戸時代には、面白い袱紗もあったんだねえ。」
「それでは、熊さん、第1室から順に見ていくとするかね。 第1室にある、奈良時代の大般若経(〜1/20)は、博物館の所蔵ではないから、よく見ておこう。」
「ご隠居、この屏風絵は、見たことありますよ。」
長谷川等伯(はせがわとうはく) <
松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)> (六曲一双、紙本墨画) 〜1/14
料紙の紙質や紙の継ぎ方のみだれから、この作品が襖絵の草稿(下絵)であったのではないかという説がありますが、最高級の墨、超絶した技、そして緻密な計算によって描かれたこの屏風には、単なる下絵としてとらえきれないものがあります。(作品解説より引用)
「あっ、ほんとだ。 この雪山のところと左側の松の間で紙の貼り位置が上下してますね。」
「この部屋全体が、しんとした湿り気を含んだ空気に満たされているように感じるのは、屏風の大きさだけではなくて、霧に包まれた松の描写や和紙特有の白さにもよるのだろうな。」
伝・宗尊親王<
寛平御時后宮歌合(十巻本)(かんぴょうのおんとききさいのみやうたあわせ)> (一巻、紙本墨書) 〜1/20
<
寛平御時后宮歌合>(文化遺産オンライン)
<
寛平御時后宮歌合>(e国宝)
「歌合、寛平御時后宮歌合、春歌二十番、左、紀友則、...て読めますね。 関白、藤原頼道の命によりって、そいじゃあ、ご隠居、特別展のほうへ出してもいいんじゃねえですかい?」
「言われてみれば、あっちには、陽明文庫所蔵の伝・宗尊親王の歌合巻が、展示してあったじゃないか。 かな文字が美しいな。」
「こっちの伝・小野道風や藤原定家なんかも特別展とつながってますね。」
伝・小野道風<
継色紙(つぎしきし)> (一幅、彩箋墨書) 〜1/20
藤原定家<熊野懐紙> (一幅、紙本墨書、鎌倉時代・建仁元年(1201)) 〜1/20
室町時代・作者不詳 <
月次風俗図屏風(つきなみふうぞくずびょうぶ)> (八曲一隻、紙本着色) 〜1/20
<
月次風俗図屏風>(文化遺産オンライン)
「右から春夏秋冬の順に、季節毎の風俗を描いたものだな。 ところどころ痛みが出ているようだが。」
「へえ〜、これはまた、たくさんの人が描かれていますね。 正月の羽根つき、花見、田植え、鹿狩り、雪合戦もありますね。」
飛鳥井雅経<熊野懐紙> (一幅、紙本墨書、鎌倉時代・正治2年(1200)) 〜2/11
中国・景徳鎮窯<天啓赤絵梅樹文四方向付> (5客、明時代・17世紀) 〜4/6
江戸時代・作者不詳 <月紅白梅図屏風> (六曲一双、紙本金地着色) 〜2/3
円山応挙<波涛図> (四幅、紙本墨画、天明8年(1788)) 〜2/3
金剛寺は、応挙の生まれた京都府亀岡市の穴太にあり、応挙の手により膨大な数の襖絵が描かれた。現在は、掛幅や屏風に改装されている。波涛図は、本堂仏間前の三室にわたり描かれたもので、鶴や岩を一部に添えるほかは、激しくうねる波が連綿と続いていく。(作品解説より引用)
呉春<鶴図屏風> (六曲一双、紙本墨画淡彩) 〜2/3
呉春は、江戸中期の画家、俳人で、四条派の祖である。はじめ与謝蕪村に学び南画を描くが、後に円山応挙に学んで、写生画派に転向した。本図は、呉春が門跡寺院の妙法院に出入していたころのものと考えられ、真仁法親王にかかわる作品である可能性が高い。(作品解説より引用)
江戸時代<初音蒔絵源氏箪笥> (1基、18世紀) 〜1/14
「ご隠居、『源氏物語』の冊子を収めるって、こんな小さな箪笥に54帖分、入っちゃうんですね。 今どきの、豪華ケース入りBOXセットって感じですね。」
久隅守景<虎図> (一幅、紙本墨画淡彩) 〜2/3
狩野常信<龍虎図> (二幅、絹本墨画) 〜2/3
「水墨の虎の掛軸が二つ並んでます。 どっちの虎も滑稽な顔してるなぁ。」
鈴木其一<猩々舞図> (二幅、絹本着色) 〜2/3
本阿弥光悦<和歌巻> (一巻、彩箋墨書) 〜2/3
「ご隠居、この版下絵は、俵屋が手がけたんでしょ? 巻物の右から左へ目を移していくと、料紙の上辺によっていた薄野がだんだん天地いっぱいにまで広がってくるというデザインになってるんですね。」
「光悦の書も、書き出しの位置や、全体の重心が下へ移ってきてるだろ。」
狩野晴川院養信<応永舞楽図巻(模本)> (一巻、紙本着色、文政3年(1820)) 〜2/17
(前期(12/26-1/27)・後期(1/29-2/17)で巻替あり)
鈴木春信<比良暮雪> (中判錦絵) 〜1/14
「『比良暮雪(ひらのぼせつ)』とは、近江八景の一つじゃよ。」 「あ〜、『濡れて乾かぬ比良の雪』っていう...」 「それは違うだろ!」
乾山<色絵椿図香合> (1合、18世紀) 〜3/30
「出光の『乾山展』にも出品されていたものだ。」
仁清<
色絵月梅図茶壺> (1口、17世紀) 〜3/30
特集陳列「甦る天平の宝−正倉院宝物模造」
「ご隠居、ここの展示品は、全部、正倉院宝物の模造品なんですか? どれもこれも明治時代とか、音まで復元できたんですかね、...天平時代の録音が残っているわけないか。」
<模造 螺鈿槽箜篌(らでんのそうのくご)> (1面、明治時代) 〜2/24
<模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)> (1面、明治時代) 〜2/24
<模造 螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)> (1面、明治32年(1899)) 〜2/24
(画像は、楽器の背面)
<模造 金銀平文琴(きんぎんひょうもんきん)> (1面、明治12年(1879)) 〜2/24
「この青い山は、東山魁夷かと思ったら、速水御舟ですか!」
速水御舟<比叡山> (一幅、大正9年(1920)) 〜1/20
今村紫紅<熱国之巻(夕之巻)> (一巻、大正3年(1914)) 〜1/20
<
熱国之巻>(文化遺産オンライン)
「画面全体にまかれた、細かい金箔が、熱帯らしい照り返しと熱気を感じされますね。」
<若松蒔絵文台硯箱> (1具、明治時代) 〜3/23
「ご隠居、東洋館も新春特集なんでしょ?」
新しい年を寿(ことほ)ぎ、歳寒三友(さいかんさんゆう、松・竹・梅)を中心に中国の吉祥図を特集します。厳しい寒さの中で、松や竹は常緑を保ち、梅は毎年必ず春の魁として花を開いて清香を放つことから、中国の人々は、松・竹・梅を厳しい環境の中でも節度を守り不変の心をもつものとして歳寒三友と讃えてきました。三友のうち、竹と梅は、離俗と隠逸を象徴する蘭や菊とともに四君子(しくんし)ともいわれました。
また、中国では古くから、松には不老長寿、竹には平安や子孫繁栄、梅には安産と子孫繁栄、そのほか、蓮・水鳥・魚には豊かさ、牡丹には富貴、桃には長寿、葡萄・瓢箪・石榴などには子孫繁栄、鳳凰には天下泰平、蝙蝠には福、鵲には吉兆、水仙には仙人すなわち長寿、竹石には祝寿などの意味をこめられてきました。それらは吉祥図として盛んに描かれ、今日まで広く親しまれてきました。さまざまな願いがこめられた中国の吉祥図の世界をお楽しみください。 (東京国立博物館)
趙之謙<
花卉図> (四幅、紙本着色、清時代・同治9年(1870))〜1/27
沈銓<鹿鶴図屏風> (六曲一双、清時代・乾隆4年(1739))〜1/27
「左隻に描かれている波は、生き物のようにうねってますねぇ。」
沈銓(号は南蘋)は中国・清時代の花鳥画家。享保16年(1731)に来日し数年滞在した。その画風は江戸時代の画家に大きな影響を与えた。本図は沈銓の代表作の一つ。多寿を願う吉祥図で、不老長寿を寓意する鹿、鶴、松、柏、桃、霊芝などが描かれている。(作品解説より引用)
「隣接する中国書跡のコーナーは、『董其昌(とうきしょう)とその時代』という特集だが、董其昌(1555〜1636)という人は、明時代の官僚でありながら、書画にも才能を発揮した人物だそうだ。 書は、顔真卿や虞世南を学んだが、これに飽き足らず、王羲之ら、魏・晋時代の書に遡ったそうだ。」
董其昌<
行草書羅漢賛等書巻> (一巻、紙本墨書、明時代(1603)) 〜1/27
董其昌<行書邠風図詩巻> (一巻、明時代(1621)) 〜1/27
(作品名3文字目「ひん」の字は、分におおざと、下の写真の1文字目)
参照サイト
東京国立博物館
メモ: 最寄り駅 JR上野駅公園口、JR鶯谷駅、メトロ銀座線上野駅7番出口で「しのばず口」、9番出口で「パンダ橋」)
料金 600円、ぐるっとパス(100円割引券)
滞在時間 15:05〜16:25

4