2021/8/30
オープンカー幌だけ黒し夏休み

この、頭部だけ黄色系の虫も、台所の常連だが、なんという虫かずっと知らない。

もう一人の常連の、蠅っぽい虫との競演。横からのアングルでお送りします。
【余談コーナー】
フジモトさんは蚊帳のつられたベッドを「謹んで」という風に使用した。
カビにも虫にも驚く顔をみせなかった。
事前に話していても、それでも「これほどとは!」と驚きを隠さない人も多いのだが。
「驚くほどではなかった」のかもしれないが、礼節を発揮して「驚きをおくびにも出さなかった」のかもしれない。
何年か、来てもらったが、山荘内で彼がなにをして過ごしたのか、あまり覚えていない。
(麻雀には付き合ってくれた気がする)。
あるとき彼の車でバラギ湖という人造湖までドライブをした。
名久井さんと、アッコさん(『ねたあとに』のアッコさんのモデルのアッコさん)と僕。
そのときのフジモトさんの愛車は幌を外すとオープンカーになるタイプで、名久井さんが助手席、僕とアッコさんが後部座席だった。
オープンカーが快適なのは前部座席だけ、後部座席は強風で息もつけぬ。事前にフジモトさんから説明を受けて、車が動き出したらその通りだった。
このとき、自分とアッコさんが子供で、助手席と運転席の名久井さんとフジモトさんが親、という感じがすごくした。
圧のある風でウップとなっている二人(子供)と、構わずハンドルを動かす大人。
まあ、四人掛けの乗用車では、もとより後部座席=子供という発想は普通のものだ。
普段からの各々のキャラクターぶり(大人びた名久井さんたち、のんきなアッコさんと僕)とも呼応する。
でも、フジモトさんの、デフォルトで備わった寡黙な「父らしさ」というのがこのとき、殊更に輪郭を帯びて感じられたのだった。
父性に満ちたとか、大黒柱とか、導いてくれるみたいなことと違った、家族における寡黙担当としての「父」とでもいうか。
(もちろん、導いてくれる、頼れる人でありましたが)。
バラギ湖は鏡のような湖面で、小さくて静かで、さりとて神秘的とか風光明媚というわけでもない、どこかうつろな湖だった。
この静かな湖も、フジモトさんの印象にわずかに連なっている。
(でもそれは、後々の彼の印象とあわせてこじつけてしまっただけかもしれないが)。
このときのバラギ湖行で、のちに僕は俳句の連作を作った。
『新装版・春のお辞儀』に収録してます。買おう。
