イナの川の木の橋まで来た時です。
かわぎしやなぎの木かげに茶色
のせなかが見えました。「かもクルリだ!わぁい!」
タロは、とびあがって、むぎわらぼうしをたかくふりました。
「まってて! 今行くからね。」
橋からかわぎしへひといきにすべりおりました。
ところが木のとげにタロのシャツをひっぱりました。
タロはひっくりかえり、タロの手からはなれたぼうしは
水におちました。
「まって まって!」
ぼうしはくるくるまわって川のまん中へ出ていきました。
手は届かないところです。深いところまでおよげないタロは
かものクルリをよびました。
「クルリお願い、ぼうしひろって!」
クルリが一回てんして帽子をひろってくれたらいいのになあと
願いましたけれど、クルリはトプンと水のなかへはいって
それっきりすがたが見えなくなりました。
ピンク色のむぎわらぼうしは手の届かない遠くへ
流れて行ってしまいました。
クルリがひろってくれたら、とげさえなかったらと
おもいました。しんせつな豚の女の子のことを思い
悲しんでいました。


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