昨日、偶然ある本を見つけた。こういう出会いは最近とみに少なくなっているからうれしかった。首都圏最大規模何十万冊といううたい文句の古書フェアでも、最近は探求本に巡り合うことは少ない。探している本は、検索してネットで取り寄せる、もしくはオークションで買うということが多くなっている。
それでも、こうして古書店で巡り合うかのように出会うのはうれしいものだ。
本の名前は『阿部薫覚書』――これは文遊社版の書物の元になったもので、阿部薫の『ラスト・デイト』(1989年)がCDとして発売されたのを記念して限定1,503部発行されたものの1冊である(編集編纂委員会/発行ランダムスケッチ)。
それに、翌日の今日、9月9日は阿部薫の命日であり(ボクが名付けた「マリア忌」だ)、それも今年は丁度30回忌にあたる。カオル(フーテンネームはマリアで、これは「風月堂」でボクが名付けた)の霊よ、安らかにと言いたい。
9日、阿部薫が残した音でも聞きながら静かに懐かしくマリアのことでも追悼することにしよう。
「エリック・ドルフィを父とし、ビリー・ホリディを母として俺は生まれた。」
「ドラッグでもプレイでも俺は一度だってハイになったことはない」
「ぼくはだれよりも早くなりたい。」
鈴木いづみが、その自伝的な小説『ハートに火をつけて』でマリアのことを「ジュン」という名で表現したのがぼくには不思議でならない。

0