また、なんだか一見アカデミックなタイトルをつけて読む人を幻惑しようと言うもくろみだな! と、意図を見抜くひとだけに本日は読んでもらいましょう(笑)。
今もあると思うが『解釈と注釈』という雑誌があって、いや1回も買ったことはないのだが(ごめんなさい! 古典文学が主な内容でしたよね)、このモダンとも、気負いとも無縁なタイトルのつけ方がそのそっけなさとともに気になっており、一度そういうタイトルをつけてみたかったのです。と、ここまでが、前文だ。
10月2日付けでアップした「妖かしの絵師――竹中英太郎」の記事がやや消化不良気味と言うこともあるのだが、まるで弥生美術館の展覧会や、甲府の記念館に行かなければ英太郎の挿し絵は見れないような書き方になってしまったかもしれない。
それでは、お前は幻の画集『百怪、我ガ腸(ハラワタ)ニ入ル』(1990年三一書房)を持っているから、そんな余裕のあることが言えるんだよ、と思われてしまったら身もふたもない。
いやいや、そんなことはない。実は、画集を買わなくても竹中英太郎の挿し絵は見ることができるのである。これが、本日の「補遺と注釈」のテーマであります。
それに、この1冊で「小説世界と挿し絵の稀有な出会い」とボクが書いたそのものが味わえるのである! それも、昨日までの記事ブラッドベリの『10月はたそがれの国』を翻訳出版した東京創元社から刊行されている。創元推理文庫の1冊であります。何をもったいぶっているのか、早く本題を書きなさい! と、叱られそうだが、実は今日の内容にはそんなに情報量がないのであります(笑)。
●『盲獣』江戸川乱歩/挿画・竹中英太郎(創元推理文庫・江戸川乱歩傑作選14)
この1冊で竹中英太郎の挿し絵とともに乱歩の『盲獣』を読めば、もうその挿画なしに『盲獣』を読めなくなってしまうだろう。ただ、本文中に、そえられたイラストは初出誌のコピーで、裏刷りした状態で復元せざるを得なかったようである。だが、なんと『探偵趣味』(平凡社版全集付録)連載の「地獄風景」とその挿画が復刻されていることと、もうひとつ特典がある。本の巻頭に原画からおこした『盲獣』の挿画がコート紙にグラビアオフセットで15帖印刷されている。これは線数も多くて、失礼だが、記念館発行の画集よりも再現性がいい。これは、英太郎ファンなら買いだし、初期の英太郎の画風にふれられる格安で最大の書物である。おためしあれ!
おっと、これも落としてはならない。同じシリーズで英太郎が挿画を描いている乱歩の長篇代表作。この挿画も素晴らしい。
●『孤島の鬼』江戸川乱歩/挿画・竹中英太郎(創元推理文庫・江戸川乱歩傑作選1)
さて、このように書き終わってみれば、「補遺」はまだしも「注釈」は何もなかったことに気付く(笑)。ま、このような虚仮(こけ)オドシの記事も「妖かし」に、免じて許してもらおう。え? それは、「妖かし」じゃなくて、「怪しい」だって?
口の効き方に気をつけたまえ!

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