「旅日記その10/凶徒 ナニワに行く(参)・通天閣に何思う?」
凶徒見参! 関西ツアー2004/旅日誌
西成に向かったボクは、ドヤ代1,000円、風呂つきの、マァ、小綺麗な簡易宿泊所(といっても中は綺麗で、事実看板にはビジネスホテルと書いてあった。日雇い肉体労働もビジネスには変わりない訳だが……)に泊まる事にした。三畳ひと間。フトンひとつしか敷けないが、いたって快適である、畳が新しい。全然、清潔で、ただ狭いせいか若干閉所恐怖にとらわれるかもしれない……。
荷物をおいて夕食に出かける。この夕食はしほさんととる予定だったから、かえすがえすも連絡がつかなかったのは残念なのではあるが……(ブツ…ブツ…)。そこで、新世界の方まで歩いて行ったのである。ジャンジャン横丁は庶民の街だ。ここのパワーは、戦後焼跡闇市の名残りだろう。なんと言っても、食べ物が安い。ボクも大阪名物を食べようと思いながらも、結局おかず1品100円の誘惑には抗しがたく、食堂でさんま定食にしてしまった。安いからとサラダとか漬け物とか取っていたら、そこにメシと味噌汁だけを注文してソバみたいにかきこむと風のように去っていったオヤジさまがいた。いや、さすがである。何がさすがだと言われても困るが、さすがだと思うのである。どうも、ボクなどは安いと思うと余計なものまでつい注文してしまう。さらには、小ナマ(グラスビールと東京では言うところでしょうが、そんなシャレたものではなく)まで注文してしまった。オヤジさまのように、メシについてくるお新香をおかずに味噌汁でかきこむ。こうでなきゃいけない。ボクも貧乏なんだから……(しほさんと食事にいくときはどうだったのか、本人はすっかり意に介さない)。
通天閣も、そもそもは新世界周辺の小さな商店主や、商いを営むひとが結束して建てたタワーだ。国や市や大企業が計画立案した訳ではない。いまや、ナニワのシンボルタワーのような通天閣には大阪らしいエピソードがあるらしい。
通天閣のネオンは、どこか懐かしさをよびおこす。ボクに浅草の仁丹塔を思い出させるからかもしれない(だから前回は後楽園か、と書いたのだが、西成という「寄せ場」が、隣にあることを考えればやはり浅草と山谷の関係に近いかも知れない。しかし、「仁丹塔」って知らないだろうなぁ)。

(大阪・通天閣)

(浅草・仁丹塔)
ブラブラ歩いていて驚いたのは、東京では昭和40年代にはすたれてしまったスマートボールがちゃんと生きて遊ばれている事だった。昔は新宿でも、パチンコよりスマートボールがメインだった。いやいや、それだけではない。どこかで看板を見たが、弓道場があったようだ。これは東京では昭和30年代くらいですたれた遊興だ。
ある意味、大阪にはタイムスリップというよりしぶとさがある。東京ではとっくに見放してしまうだろう商売が、生きた博物館のように庶民の生活に溶け込んでいる。東京には流行はあっても、文化がない。カルチャーは培うものという意識がない。文化もまた建物と同じスクラップ&ビルドだと思っているのではないか?
だから、このような関西(京都も含めたい)のしぶとさは、庶民や民衆が文化を培い、自分たちのものだと思っているからだと思う。ま、多少エゲツなさもあるが、東京はもはや大資本、企業の仕掛けとしての文化しかない。庶民がまだまだ主人公である点でボクは好感を持つのだ(とはいえ大阪VS東京論を書きたい訳ではない)。
通天閣で有名な歌謡劇場は改装中だったようだ。しかし、ボクが散策した時間帯にはもし、開いていたにしても公演は終わっていただろう。アーケードの上野か御徒町を連想させる市場も、もう終っていた。さらに、ブラブラしていたボクの目に飛び込んできたのは、本日ロードショーという看板だった。しかし、そのロードショーの映画というのは『三匹の侍』、『女囚701号 さそり』である。おいおい、ちょっと待てよ! と言いたいプログラムではないか。『三匹の侍』はフジTVで放映していた人気TV番組で、黒沢明に影響は受けていたとしてもその砂埃の舞うリアルな映像と、ユーモラスな演技で長門勇を一躍有名にした作品でありそれを五社英雄がメガホンをとって映画化した1964年の松竹映画である(他には丹波哲郎、平幹二朗、桑野みゆきが出演)。
もう一本は、嗚呼! いうまでもなくボクが大好きな女優のひとり梶芽衣子の出世作。篠原とおるの人気劇画を映画化した「女囚さそり」シリーズの第1作! 伊藤俊也監督による1972年の作品。シリーズは全4本作られた。これをスクリーンで見れるのだ、この機会を見逃してなるものか! という訳で、「本日ロードーショー」の2作品をわずか1,000円で見る事になってしまった(隣は日活ロマンポルノだったが、一も二もなく梶芽衣子をボクは選んだ。こういうところはタランティーノに似ているかも!(笑))。
(この項さらにつづく/おいおい!何時になったら『cocoroom』の報告に移るんだい!)


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