(参考・山尾三省の遺言抜粋)
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まず第一の遺言は、僕の生まれ故郷の、東京・神田川の水を、もう一度飲める水に再生したい、ということです。神田川といえば、JRお茶の水駅下を流れるあのどぶ川ですが、あの川の水がもう一度飲める川の水に再生された時には、劫初に未来が戻り、文明が再生の希望をつかんだ時であると思います。
これはむろんぼくの個人的な願いですが、やがて東京に出て行くやもしれぬ子供達には、父の遺言としてしっかり覚えていてほしいと思います。
第二の遺言は、とても平凡なことですが、やはりこの世界から原発および同様のエネルギー出力装置をすっかり取り外してほしいということです。自分達の手で作った手に負える発電装置で、すべての電力がまかなえることが、これからの現実的な幸福の第一条件であると、ぼくは考えるからです。
遺言の第三は、この頃のぼくが、一種の呪文のようにして、心の中で唱えているものです。その呪文は次のようなものです。
南無浄瑠璃光・われらの人の内なる薬師如来。
われらの日本国憲法の第9条をして、世界の全ての国々の憲法第9条に組み込まさせ給え。武力と戦争の永久放棄をして、すべての国々のすべての人々の暮らしの基礎となさしめ給え。
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2001年8月28日享年62歳の若さで死去した山尾三省が、愛する妻と子供たちに残したメッセージだが、それはとりもなおさず自らの生命の尽きるその末期に詩人が世界を愛していると表明することだったと思う。
これは、遺族の方に失礼な物言いだとしたら、あやまりますが、「縄文杉の生い繁るこの島で/わたくしはひともとのすみれの花となろう/縄文杉の森を飾る すみれの花となろう」と書き、それを望んだろう三省の遺骨こそは縄文杉の根元に「樹木葬」で葬りたかったと……これはひとりボクの願望でした。

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