ドラマにもなった人気漫画『ドラゴン桜』に、次のような台詞が出てくる。
「社会のルールってやつはすべて頭のいいやつが作っている。そのルールは頭のいいやつに都合のいいように作られているんだ。逆に都合の悪いところはわからないように隠してある。つまりお前らみたいに頭使わずに面倒くさがっていると……一生だまされて高い金払わされるんだ」
この漫画の筋書きは、経営破綻した三流私立高校の経営建て直しのためにやってきた主人公の弁護士が、その学校を進学校にしようとするというものである。
つまり、上の台詞は「だから頑張って勉強して、上を目指せ!」ということなのだろうが。
でも、私にはこの台詞、正直(エリートや金持ちでもないのに)小泉自民党に投票した人たちに送りたい。もちろん、原作の「勉強がんばれ」という意図で使ったのとは異なるだろうが。
でも「頭使わずに面倒くさがっている」という点と、「一生だまされて高い金払わされる」という2点においては、そのまま有権者にも当てはまるのではないか。
失礼を十分覚悟の上で、言わせてもらうと……。
読売新聞の最新の世論調査では、小泉内閣の支持率は62%だという。
これに関して「日刊ゲンダイ」で、政治アナリストの伊藤惇夫氏が以下のようにコメントしている。
「本当に、この国の国民はオメデタイのひと言です。自分の周囲を見渡せば、仕事でも生活でも不安がいっぱいのはずなのに、それを貧困な政治情勢と結びつけられない。『改革』といった正体不明の言葉に簡単に踊らされる。郵政が民営化されれば税金が入ってくる、公務員が27万人も減ると小泉首相が叫べば、キャーッと、何か自分にもいいことが起きるかのように錯覚して、その発言を疑いもしない。愚かとは言いたくありませんが、日本人の多くは深く考えることが面倒になってしまったのでしょう」
日本の有権者が、考えることを面倒くさがって、放棄したとしか思えないような事例はまだある。
やはり読売新聞の世論調査では、小泉改革に一番期待するものは、「年金」など社会保障の問題、次いで「景気対策」となっている。「郵政民営化」などは、17項目のうち9番目でしかない。
だが……実際に今、小泉自民党が熱心にやっていることと言えば何だろうか? 言うまでもないだろう。
どうも、「有権者国民が小泉政権に期待していること」と、「小泉政権が実際にやっていること、やろうとしていること」との間には、明らかな乖離があると、私は思うのだが……? それでも小泉政権が支持・信頼されるとは、これいかに!?
確か、4年前に小泉政権が発足した時期にも、同じような現象が起こった。あれから、この国の有権者大衆は大して変わっていない……進歩していないということか?
「頭使わずに面倒くさがっている」としか、私には見えないのだが。
そして、増税や所得控除の廃止という直接的な形から、「一億総負け組社会化」政策という一見わかりにく間接的な形まで、あらゆる方法で「一生だまされて高い金払わされる」のではないか。
9月18日付の日記でも紹介した、「名前が書きやすかったから」という理由で投票したというファン=ヒューリック氏の後輩くんにもあてはまりそうだ。
今は62%という高支持率だが、それはいつまで続くのだろうか?
そのうち、増税などの負担増、それに伴う生活苦にさらされて、ようやく「小泉路線=弱肉強食・一億総負け組化」ということに気づくのだろうか?
それとも、増税だろうが、戦争だろうが、小泉さんが何をやろうが、頭使うのをやめて、ずっと支持し続けるのだろうか?
嗚呼、民主主義とか、個人の自由意志って何だろう?
こんなにも簡単に、ホイホイと踊らされ、流されるとは!
そう、思わずにはいられない。
最後に、かのニコロ・マキュアベッリが『政略論』で言った言葉を紹介しよう。
この言葉は、日本人の過去、現在、未来を言い当てているかのように、私には思えてくる。
「長期にわたって支配下におかれ、その下で生きるのに慣れてしまった人民は、なにかの偶然でころがりこんできた自由を手にしても、それを活用することができない。活用する術を知らないのだ。
動物園で飼われた猛獣に似て、原野に放たれてもどう生きていくかを知らないので、簡単に再び捕獲されてしまう。
支配に慣れた人民も自分の頭で行動するのに慣れていないために、何が自分たちを守るかがわからないのだ。かといって、彼らを引っ張ってくれていた人も追い出してしまった以上、他に方策もない。
そこで結局、遅かれ早かれ、以前よりは過酷な状態を甘受するしかなくなるのである」
我々、日本の有権者を待ち受けているのは、「以前よりは過酷な状態」ということか……。