「清浄華院の紅葉と泣不動伝説 @ 京都妖怪探訪(591)」
妖怪スポット
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どうも、こんにちは。
もう紅葉の盛りは過ぎたどころか、既に年末と言える時期に入っていますが、
『霊場魔所の紅葉』シリーズをまだ続けています(笑)。
今回は、
シリーズ前々回と
前回の続きで、
本シリーズでとりあげるにふさわしい霊場を訪れ、その紅葉風景を眺めます。
京都の荒神口通りから寺町通り沿いに立つ古刹、
清浄華院です。
更にこの古刹には、あの
安倍晴明も関わったという「泣き不動」の伝説を描いたという、貴重な縁起絵巻もあったというのです。
シリーズ前回の続き、寺町通りを
廬山寺からさらに北へと進みます。
少し歩きますと、立派な門構えのお寺が見えてきます。
ここが今回の目的地、
清浄華院です。
写真左上部分にマンションのような建物が見えますが、ここは福祉事業もしておられるようで、その為の施設だそうです。
この寺で頂いたパンフレットによれば。
ここの歴史は古く、貞観2年(860年)に
清和天皇の勅願により、
第3代天台座主・“慈覚大師(じかくだいし)”円仁(えんにん)が御所内に開いた道場がその始まりだとされています。
浄土の蓮の花のように清らかな修行が出来る場所という意味を込めて「清浄華院」と名付けられました。
後に
浄土宗の開祖・法然上人がここに招かれ、
後白河法皇、
高倉天皇、
後鳥羽天皇の3天皇に教え施し、戒を授けました。その功績で清浄華院は法然上人に与えられ、それ以後は浄土宗寺院となります。
境内へと進みます。
本堂にあたるであろう「大殿」へ。
大殿の前には、面白いものがいくつかあります。
まずは「
立入宗継旌忠碑(たてりむねつぐせいちゅうのひ)」。
天命の大火の犠牲者の供養塔らしいです。
「山王大権現」の社です。
「みざる、いわざる、きかざる」の三猿も。
確か
山王権現とは、比叡山延暦寺の鎮守神でしたが、ここが元々は天台宗系の寺院(道場)だったということと関係しているのでしょうか。
ここには他にも、面白そうなスポットがあるのですが、今回の主題とはそれますので、軽く紹介するだけにしておきます。
本堂(大殿)へと礼拝に上がります。
この本堂の中に、今回の第一目的である、仏画が祀られているのです。
本堂内には、師匠の身代わりになろうとした若い僧の為に涙を流して、さらにその身代わりになろうとしたという、「泣不動(なきふどう)」と呼ばれる仏画の不動明王が、それです。
さすがに内部の撮影は出来ませんでしたし、目的の尊像からは離れた場所からしか見られなかった為、詳細は見えなかったのですが……。
伝説の通りならば、その不動明王の目には涙の跡が見えるはずだと思って目を凝らしてみたのですが……距離があったのと、私の視力が足りなかったので、確認出来ませんでした。
さらにここには、その不動明王像の伝説について描かれた『泣不動縁起絵巻』も納められていました(現在、普段は博物館に寄託してここには無いそうですが)。
さて、ここから。
この『泣不動縁起絵巻』に描かれた、泣不動の伝説について解説します。
さすがに絵巻の実物を撮影させてもらうことは無理ですが、絵巻の場面を描いた絵葉書を購入することが出来ましたので、それを観ながら。
三井寺の智興上人は「聖(ひじり)」と呼ばれた僧侶でしたが、ある時重病に陥ります。
彼の弟子の優れた僧侶が何人も祈祷を行いましたが、病は一向に治りません。
そこで大陰陽師・安倍晴明を呼び、
人の生死を司る神・泰山府君に治癒を祈願しました。
しかし。
「これほどの重病となれば、どなたかが身代わりにならなければ、お命を助けることはできません」
晴明はそう告げましたが、弟子たちのうち誰も身代わりを引き受ける者は居ませんでした。
ただ一人、証空という弟子が、自ら身代わりに名乗り出ました。
安倍晴明は泰山府君の儀式を行い、証空はその身代わりとなりました。
師匠の生命を助ける代わりに身代わりになった証空は、病の苦しみながら、自分が信仰していた不動明王の仏画に祈りました。
その時、その不動明王が涙を流し、「汝は師の身代わりになった。我は汝に代わろう」と、床に落ちて本当に身代わりとなって、証空の生命を助けました。
証空の身代わりとなった不動明王は、地獄の閻魔王の前に引きずり出されました。
しかし、仏教では不動明王は閻魔王より上位の存在です。
逆に閻魔王が不動明王にひれ伏して、不動明王は元居た仏の世界へと堂々と帰還することが出来ました。
勿論証空も助かり、皆がそれを祝う場面で絵巻は終わります。
なお、絵巻以外で伝わる話に寄れば、この件で師匠の絶大な信頼を得た証空は、後に師匠以上の名僧に成長したと伝えられます。
説話はここまで。
礼拝を終えて、本堂を出ます。
再び紅葉風景が広がります。
今年(2018年、平成30年)最後のブログ記事、
本シリーズ記事に、このような美しい話と、美しい光景を紹介することが出来たのを、幸いに思います。
今年はここまで。
また来年。
*清浄華院の周辺地図・アクセスについては
こちらを参照。
*清浄華院のHP
http://jozan.jp/index.php
*『京都妖怪探訪』シリーズまとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm
