「神護寺の紅葉(後編) @ 京都妖怪探訪(586)」
季節の風景
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どうも、こんにちは。
前回に引き続いて、今年の
『霊場魔所の紅葉シリーズ』。京都北西の高雄の山奥にある古刹・神護寺の紅葉風景を巡ります。
前回の続き、金堂(本堂)へと続く石段を上っていきます。
金堂へ上がります。
なお本堂内には、教科書でも見たことのある「伝源頼朝像」を含む
国宝「神護寺三像」もありました。
本堂への礼拝を済ませて辺りを散策したら、不動明王像が。
さて。
神護寺を語る上で、
前回で紹介した空海さんの他にもう一人欠かせない人物が居ます。
それが神護寺中興の祖ともいうべき、
文覚上人です。
神護寺は、平安時代に二度の災害の為、堂塔のほとんどを消失して荒廃していましたが、文覚上人が寿永3年(1184年)に
後白河天皇の勅許と、
源頼朝の援助を得て、復興されました。
(※神護寺配布の案内パンフレットの記述より)
あの「伝源頼朝像」を含む
国宝「神護寺三像」が神護寺にあったのは、この為だったのですね。
現在でも広大な境内敷地内には、創建者である
和気清麻呂の墓と、文覚上人の墓が遺されています。
ただ……。
美しい紅葉風景の中で、こんなことを言うのは申し訳ないと思うのですが。
私はこの文覚という人物を「クソ野郎」とか「鬼畜野郎」とか「最低のストーカー野郎」とか呼んでいます。
その理由は、
こちらの過去記事でも紹介したことがありますが、『源平盛衰記』などでも描かれている有名なストーカー殺人事件の犯人でもあるからです。
過去記事の繰り返しになりますが、ここでその詳細について少し話を。
『源平盛衰記』などによれば、文覚という人が出家することになった原因として、袈裟御前という女性に横恋慕したあげくに殺してしまったという話が伝わっています。
今で言うストーカー殺人事件です。
元は北面の武士だったという遠藤盛遠は、同僚である渡辺佐衛尉源渡(みなもとわたる)の妻である袈裟御前(けさごぜん)という女性に横恋慕し、彼女の母を人質にとって自分の想いを遂げようとします。
……。
これだけでも、この遠藤盛遠という人物は、本当に最低な野郎だな、と私は思うわけですが……。
やむなく袈裟御前は、盛遠に「夫・源渡を殺せば想いを遂げさる」という約束をします。
闇夜にまぎれ、源渡の屋敷に忍び込んだ盛遠は、袈裟の手引きで渡の首をはねます。
しかし首をはねられたのは渡ではなく、夫の身代わりとなった袈裟御前の方でした。
その後、盛遠は己の罪を恥じて出家。夫・渡と袈裟御前の母も出家して、袈裟の供養をしたと伝えられています。
これは悲恋物語として有名ですが、悲恋物語というより、文覚こと遠藤盛遠のやったことは、非常に自己中心的で同情の余地など一切無い、悪質卑劣な犯罪行為だと、私は思うのですがね。
そう言えば、ここには文覚上人こと遠藤盛遠の墓所もあったのです。
よし、せっかく神護寺まで来たのだから「ふふふ、来てやったぜ、クソ野郎」と言ってお参りに行こうと思い立ちました。
で、和気清麻呂と文覚上人の墓所を訪れようと、そこへ続くという山道を進んでいったのですが……。
なんと、今年9月の
台風21号の影響か、多くの倒木で道が塞がれていました。
「おのれ、クソ……否、文覚上人よ、俺を拒むのか!?」
だが、
『京都妖怪探訪』と称して、今まで幾つものヤバい場所や、曰く付きスポット等を訪れてきた私としては、これしきのことで引き下がってなるものかと、さらに進んでいきます。
っと、今度は大木の根が道を丸ごと塞いでいました。
「ほう、文覚よ。あくまでも俺を拒むのか」
それでも、というよりこちらもますます意地になってそこを乗り越えて行きます。
昔の高僧の墓所みたいな場所に出ました。
礼拝してさらに山道を歩き回り、和気清麻呂と文覚上人の墓所を探します。
ようやく和気清麻呂の墓所に辿り着きました。
礼拝して、墓所を後にしました。
次は文覚上人の墓を目指します。
案内パンフレットの境内地図を見ながら、文覚上人の墓所へ続く道を探しますが……何と、そこへの道と思われる場所が、トラロープで塞がれていました。
「ぐぬぬぬ……。クソ野郎、文覚よ。あくまでも、とことん俺を拒むのか」
台風21号の影響で、山の参道が危険な状態になっているのでしょうが。
やはり、「クソ野郎」とか「ストーカー野郎」だとか思っていたから、眠っている仏さんに来訪を拒まれていたのでしょうか……。
この先に進んで、神護寺の皆さんに迷惑をかけてしまったら申し訳ないと思って、それ以上先に進むのを断念しました。
帰り道にも美しい紅葉風景が。
しかし悲哀や愛憎など人の世の移り変わりに関わらず、季節の移り変わりは今年も、これからもずっと淡々と続いていく。
それが少し哀しくもあります。
今回はここまで。
また次回。
*神護寺のアクセス・周辺地図については
こちらを参照。
*神護寺のHP
http://www.jingoji.or.jp/
*『京都妖怪探訪』シリーズまとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm
