午前中は予報よりも空は明るく、気温もまずまずの過ごしやすいものでしたね。午後になり、雲が重く垂れ込めると空気が変わりました。秋から冬に一気になった感じです。
今、中学生の古典で、『新古今和歌集』の「三夕の歌」をやっています。ちょうどこの時期の、グランドから見える夕焼けはきれいだよねと話すと、サッカー部やテニス部だった生徒を中心にうなずいてくれます。そして「秋の夕暮れ」の情感は理解できるかと問うと、基本的には伝わるようです。日本人の感性だねと話しています。この時期、晴れると富士山のシルエットの脇をまん丸の夕日が落ちていく様子を見ることができます。
さてタイチです。入部当初は、なんともイケメンで、目力のある生徒が入部してきたなと感じたものです。黙っていると、なんて言うとタイチには失礼かも知れませんが、本当にイケメンですよね。これがしゃべると、実に賑やかな男です。教室でも、グランドでもそれほど変わらずに賑やかなようで、担任やら授業担当者を悩ませていたようですが、これはこれでうちの部の場合、ときおり出現する部員のタイプではありますので、あまりに過ぎると私の耳にも入ってきたりしています。それで練習に合間に、私にチクリとされていたことも、今となってはなつかしいものですね。
ラン能力は高く、ボールをもらう雰囲気もいいため、私は個人的にスタンドオフを試したこともあります。そうすることで、チームに幅ができると考えたからです。それが昨年の夏合宿でした。ダイキは肩に爆弾を抱えていましたから、何かあったときに対策を練るのではなく、あらかじめ複数の選択肢を持っていたかったのです。本人もまんざらでもなく、二つ返事でプレイをし始めました。練習で回している分には、タッチフットの延長ですから、本人もそれほど違和感はなかったのでしょう。ところが試合になると別です。相手からのプレッシャーが強く、ただのパスマシーンとしてしか機能しなくなる場面が出てきます。かと思えば、余裕がないためにやたらに一人で突っ込んでしまう場面も見られました。憧れはあってやってみたけれど、自分には向いていないと悟った夏でもあったようです。私自身は、この時期をもう少し辛抱すれば、確実にうまくなるのになぁと今でも考えています。ですが、本人の思いがすべてですね…
タイチの最大の課題は、メンタルコントロールでしょうね。これは最後まで彼について回ってしまった気がします。そしてこれからもこの課題克服に努めてほしいと願っています。ファーストプレイがうまくいけば乗っていけるのです。ところがうまくいかないと、負の連鎖が始まります。決定機でノックオンをしようものなら、その後の切り替えが難しく、いつまでも引きずる傾向があったのです。3年生になって、ずいぶんと意識できるようになったのですが、克服するまでには至らなかったのですね。これからも向き合い続けるものです。誰よりもイメージトレーニングを大切にしていましたから、大丈夫ですよ。
それでも3年生の夏は、自分も、仲間もとにかく鼓舞し続けました。声は通るので、タイチが声を出すと効果抜群でした。誰よりも自身と格闘していたのは、実はタイチだと私は考えています。うまくいかない自分をどのように抱えるのか、ラグビーを通してそうしたものと向き合ってきました。すべての克服はこれからにしても、決して投げ出さないのですから、いずれはタイチの持っている存在感が存分に発揮される日が来るはずだと信じています。

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