穏やかな年の瀬です。年の初めが晴天であってほしいとはもちろん思うのですが、今年の最後の日が穏やかであると、なんだか年明けもよさそうな気がしてきます。
さて朝の方が一気に書けそうなもので、この時間にパソコンに向かいました。この学年で誰よりもラグビーの経験値が高かったのは、トーマです。スクール経験者で、中学時代には選抜選手にまで認定されました。それでも中学時代はまだまだ小さなイメージがあったのですが、公庫に入ってみるみる成長をしていきます。引退の頃には大型バックスといえるようなフルバックでした。経験値が高いこともあり、スペシャリストというよりも、ユーティリティープレイヤーのイメージがトーマにはあります。割とどのポジションもそつなくこなすのです。
ただ理論派ではなく、経験値が高いからこのくらいのことは知っているだろうと思っていると、時折試合中にあれれ…というプレイをすることもあり、私たちを驚かせることもありました。周囲から厳しい声が上がった時期もありましたね。それでも感覚というのは大切な要素で、その感覚と感性は経験で十分に備わっています。動きは合っているわけです。周囲との連携に時間はかかりましたが、それがクリアできてからは、バックスは決定力を持つのです。感性で動く選手は、どうしても周囲を動かすことが上手ではありません。だって理屈よりも、自分の感覚で動くからです。自分では分かっているのですが、それを周囲にはうまく伝えられないのです。ですが両ウイングはとかく経験値の少ない選手が務めることが多く、バックスリーは連動しなければならないのですが、これがうまくいかないのです。トーマの課題はここに尽きました。そこで私からかなりうるさく後ろから、とにかく声でコントロールするように言われました。フルバックというのは、自分が動くのではなく、動かすのが一番重要な役割なのだと強く刷り込みました。個としては良くても、チームとして連動しないかぎり、うちは勝てないからです。正直、夏まで手こずりましたね。夏合宿を契機に大きく変わることになりました。
攻撃に関しては、感性が活きます。抜きに行く感覚、当たっても立っていられる感性は、経験に勝るものはありません。うちのバックスの破壊力を増幅させる効果を持っていました。誰よりも長くラグビーに携わったトーマだからこその苦労もあったのでしょうが、それでも継続は力なり、です。続けることでしか分からないこと、見えてこないこと、越えられないことがあります。これからもどんなことも積み上げていく姿勢を忘れずにいてください。トーマの持っている我慢強さが、さらなる高みに自身を連れて行ってくれるでしょう。

5