砂上の楼閣
昨年の九月にリーマンブラザースというアメリカの大手生命保険会社が倒産をして、アメリカ経済は大きな打撃を被ります。これを俗にリーマンショックと呼び、日本にも二ヶ月後には影響がしてきます。日本でもっとも直接的な影響を受けたのが、製造業系の契約社員たちでした。いわゆる派遣切りといわれるもので、それまでは契約期間が近づくと自動更新されていたものが、更新されずに契約期間満了で退社を余儀なくされたのです。景気後退の象徴のように報道されました。
前述の話は、ちょうど一年前くらいのことで、その頃には私の元に連日のようにファックスや文書が届きます。一つは内定取り消しがなかったかどうかの調査、もう一つはこの急激な景気後退で進学を断念する生徒は出ていないか、と言うものでした。一つ目はもともと本校には就職希望者がいないために、内定取り消しも何も起こらないのですが、後者はどうなのだろうかと心配する向きもありました。しかしながらたとえば浪人がどうしてもできないとか、自宅から通える大学に限るなどの条件は付いていたにしても、進学そのものを断念しなければならない生徒はいませんでした。このあたりが公立高校などとは事情の異なるところでしょう。
さてでは今年はどんなことに注意して、受験準備をするのかと考えると、一番の注意点はもちろん新型インフルエンザです。自らが罹らないというばかりでなく、大学がどのような対応をしているのかについて注意を向ける必要があります。特にセンター試験の追試が例年よりも一週間遅らせての実施の影響で、各大学への成績提供も遅れるために、合格発表日も繰り下げている大学が多数見られます。それによっては一般受験の出願にも影響を与えそうですよね。さらには○九年度入試で景気後退を印象づけているのは、早稲田や慶応、そしてMARCHに集まっていた受験生が、その下のクラスに流れ始めたということです。つまり現役にこだわり、しかもそれほど受験校数を増やせない中で、手堅く合格を取りに行っている学生が少なくないのです。その流れは大きくは変わらないようです。ですのでやはりここは強気で攻めていきたいと担任として考えるわけです。
そんな中、もう一つ心配が出てきました。ニュース報道などでもあったように、急激に円高が進んでいます。二十四年ぶりの水準にまで進んだともありました。これは日本の円が強いというよりは、世界の中でユーロやドルが信用ならないという意識なのでしょう。どうやら円高が進んで喜ぶのは個人の海外旅行者くらいで、デフレ状態にある日本にとっては、輸出部分にも影響があるため決して歓迎できることではないようです。この一つの契機は、どうやらものすごい勢いで開発が進んでいたドバイの政府系企業の資金繰りがうまくいっていないことのようです。一番の震源が、リゾート開発業者だというので、ドバイの好景気も実は日本のバブル経済同様に、地盤の緩いものだったのだといえそうです。まさに砂上の楼閣と称されても仕方のない状況のようです。
株価は日本でも、アメリカでも下がっているようです。経済の冷え込みは、私たちの生活の様々な部分に影響を与えますし、波及効果も高いのです。今回のドバイショックが世界的な広がりを見せるのか、日本にどれほどの影響を及ぼすのか、それはまだ不透明ですが、こうしたことが実は卑近にはあなたの受験に影響することがあるかもしれません。
大学もこうした景気後退で受験生を減らすのを嫌い、様々な支援策を講じてはいます。複数学部や複数日受験での受験料割引や、経済的な問題での就学困難学生への緊急奨学金の確保などです。そうした大学の流れを上手に読みながら、最終的な受験カレンダー作成の時期に入っていますよ。

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