
花咲爺の伝承を基に五、六年前に作った作品。
灰を撒く爺さんと咲く花、おどろく婆さん、見まもる犬。生と死の境目で咲く桜。
花咲かじいさんは白犬の吠える声に意味を感じて土地を掘って宝を掘り当てる。それをやっかんだ隣の爺さんに犬を殺され、その犬を埋めた土地に生えてきた木で臼を作りそれを突くと宝があらわれる。臼を隣の爺さんに燃やされその灰を撒くと枯れ木に花が咲く。花を咲かせる爺さんを見ている犬はすでに死んでいる。その犬が見える世界を受け入れるとき、世界はより陰影を増す。
↑ この作品を斜め上からみたところ。筒状した紙の前面と背面に絵を切り抜いて二枚を重ねているだけである。それに小細工を付け加えて切り折り紙的な作品に仕上げている。
図
昔の作品なので、説明用の作品もどきを作ってみる。

↑ 広げたところ。右側の葉っぱのところ、幹の基部、左側の木の根元に切り込みが入っているのが後で組み合わせるための工夫。

↑ 折ったところ。これでだいたいの形はできあがる。赤い木の枝の先を緑の葉っぱの切り込みの中に差し込む。木の根元の切り込みに幹の根元の切り込みを差し込んで広がった形を保つようにする。

↑ 下の台座に相当する部分を糊づけ。普通は糊付けでなく交差止めにするのだが、説明用の作品ということで手を抜いている。それと裏側の幹の三角系の切り込みは、ここまで台座を膨らませると長さが足らない。本番であればせめて試作品で確認してから作ることが望ましい。
二つの絵を重ねただけ、それにふくらみを持たせることでなんとか切り折り紙としての見せ場を作っている。この技法をなんと呼ぼうか?、
絵を重ねるんだから「絵重ね(えがさね)」もしくは「絵重ね作り」と名づけておく。絵を重ねるだけだからバリエーションはいくらでもあるし、画像ソフトのレイヤーの概念になれた絵描きには容易に理解できる技法のはず。折りの技術よりも平面画を描く技量が作品の出来を決めるような気がする。絵描きに向いた技法だと思う。

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